不特定多数のお客さまを対象に集客施策を行っても、上手くいかないことが多々あります。そんな時は、STP分析で対象となるお客さまを絞り、ピンポイントな集客施策を行ってみましょう。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、飲食店のDX(デジタル・トランスフォーメーション)や集客が上手くいくようになるSTP分のやり方をご紹介します。飲食店にとって基本のフレームワークなので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店のDXや集客を左右するSTP分析とは?
STP分析とは、次の3つのキーワードの頭文字を取っています。
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
これらのキーワードは、飲食店が不特定多数のお客さまでなく、戦略的に絞り込んだお客さまを対象にするためのステップになっています。セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順番で情報を整理し、飲食店のDXや集客に成功率をアップさせましょう。
セグメンテーション
セグメンテーションは「市場の細分化」と訳されることが多いですが、わかりやすく言えば「お客さまを分類すること」です。
例えばある飲食店が、ヘルシー志向でお洒落な新メニューを開発しました。少し安直な考えですが「ヘルシー志向=女性」と連想できるので、性別で1つのセグメント(分類)を作れます。しかし、こうした単純な分類ではセグメントとなるお客さまが多すぎるため、お客さまに刺さる集客施策が行えないかもしれません。
SNSが日常化したジェンダーレスの時代では、男性でもヘルシー志向でお洒落な料理に興味があります。
そこで、
- 20代の男女
- SNSのヘビーユーザー
- トレンドに敏感
というセグメントを作ってみます。すると具体性と一貫性のある集客施策が完成し、お客さまに刺さるようになります。もちろん、最初に作ったセグメントがいきなり成功するとは限りませんが、少なくとも不特定多数のお客さまを対象とした集客施策よりも成果の出やすい集客施策を考案・実施できます。
ターゲティング
セグメンテーションはお客さまを分類するステップでした。ターゲティングは「お客さまをさらに絞る」ステップです。ちなみにターゲティングには、3つのタイプがあります。
① 無差別型ターゲティング
セグメントを無視して不特定多数のお客さまを対象とする。
② 差別型ターゲティング
セグメントごとに異なる商品やサービスをおすすめする。
③ 集中型ターゲティング
ごく限られたセグメントに対して商品やサービスをおすすめする。
飲食店におすすめのタイプ、②の差別型ターゲティング、または③の集中型ターゲティングです。
①の無差別型ターゲティングは、資本力の高い大手飲食チェーンが実施するものなので、個人経営の飲食店には向いていません。大手飲食チェーンに比べて資本力の弱い飲食店は、②と③のターゲティングで持てる資本力を特定のお客さまに集中するのが基本となります。
では、②と③のターゲティングのどちらが最適か?といえば、私は③の集中型ターゲティングをおすすめします。
限られた資本を集中させることと、それによる費用対効果の高さを考慮すると③の集中型ターゲティングが最も効率的な手法です。また、特定のお客さまにDXや集客施策を集中したからといって、その他のお客さまに響かないわけではありません。
あくまでも「選択と集中」という、中小企業・個人事業主のビジネスの基本において、③の集中型ターゲティングが最適だという話です。
関連記事:ペルソナとは?DXに欠かせないフレームワークの設定項目を解説
ポジショニング
最後のポジショニングは、同じセグメントやターゲットを持つ競合店舗の中で、自店舗がどの立ち位置にあるかを把握するステップです。ポジショニングを行う理由は、競合店舗がまだ手を出していない領域を探したり、競争が激しいセグメント・ターゲットの中でも差別化を図れるポイントを見つけたりするためです。
ポジショニングのステップに関しては、ポジショニングマップを作る必要があるため以下の関連記事を参考にしてみてください。
飲食店のDXや集客にSTP分析が欠かせないのはなぜ?
STP分析の概要について理解したところで、飲食店のDXや集客にとってSTPが欠かせない理由をご説明します。
ターゲット情報に基づいた集客戦略が立てられる
集客施策が上手くいかない飲食店の多くは、無差別型ターゲティングを実施している可能性があります。セグメント・ターゲットを無視した集客施策は一見すると高い効果を発揮するように思えます。
しかし無差別型ターゲティングは「規模の戦略」が基本であり、費用対効果を高めるには大規模な集客施策を展開しなければいけません。
一方で、集中型ターゲティングなら飲食店が持つ資本を集中させ、戦略的な集客施策を考案・実行できるようになります。
いわゆる「刺さるマーケティング」が生まれる手法です。
自店舗の強みや弱みを把握するきっかけになる
飲食店がDXを成功させるには、まず自店舗の強みと弱みを把握する必要があります。デジタルツールを駆使するDXは飲食店にとって大きな変革であり、これが悪い方向に進んでしまうと自店舗が持っていた強みを失い、弱みが際立ってしまうかもしれません。
自店舗の強みや弱みを把握しておけば、「長所を伸ばして短所を改善するDX」の推進に努められるようになります。
他店舗との競争・消耗戦を回避できる
物価高騰が進む中、多くの飲食店は他店舗との競争・消耗戦に引きずり込まれています。とりわけ、価格競争はいつの時代も避けたいものです。
STP分析は他店舗との競争・消耗線を回避するためにも欠かせません。お客さまのセグメントを作り、ターゲットを絞り、ポジションを把握する。
これにより、競争なくして戦う戦略や、競争が激しい中でも強い地位を確立する戦略を考えられるようになります。
DXや集客が上手くいく飲食店のSTP分析
それでは、飲食店に欠かせないSTP分析のやり方をご紹介します。
1. お客さまのデータを収集する
最初のステップではお客さまのデータを収集します。さまざまな収集方法がありますが、おすすめはTypeformを使ったアンケートです。
以下の動画では、私が1ヶ月で1,000人のお客さま情報を獲得した際のポイントを解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店経営!1ヶ月で1000人のリストを実店舗で集めた4つのポイント
記事で読みたい方はこちら→飲食店経営!1ヶ月で1000人のリストを実店舗で集めた4つのポイント
また、アンケートを使ってお客さまデータを収集する際は、4つの視点から必要な質問事項を組み合わせましょう。
- デモグラフィック:氏名、年齢、性別などの基本要素
- ジオグラフィック:国、地域、気候、文化など地理的要素
- サイコグラフィック:性格、価値観、ライフスタイルなど心理的要素
- ビヘイアビル:外食頻度、移動手段など行動的要素
2. お客さまのデータを分類する
次に、アンケートで集めたお客さまデータを分類していきます。集めたデータをただ眺めるのではなく、Googleスプレッドシートなどのツールを用いて整理してみましょう。
Googleフォームを使ったアンケートなら、回答が送信されると自動的にスプレッドシートに保存されるようになります。これを利用してお客さまの回答をデータベース化し、グラフはピボットテーブルなどを用いて分析することも可能です。
Googleスプレッドシートを活用すればさまざまな切り口からお客さまデータを分析でき、自店舗が優先すべきセグメントを明らかにできます。
3. ターゲットになるお客さまを決める
次に、DXや集客のターゲットになるお客さまを決めましょう。STP分析のターゲット設定でよくあるのが「20代・男性・会社員」といったように、ざっくりとしたお客さま像を決めるケースです。
このようなターゲット設定は母集団が大きく、結局のところ無差別型ターゲティングを実施することになります。
そこでおすすめするのが「ペルソナ」というフレームワークです。ペルソナは収集したお客さまデータなどを参考にしながら、自店舗にとって理想となるお客さま像を作り上げていきます。
かなり細かい部分までお客さま像を設定するため、一貫性の高い集中型ターゲティングを実施できるようになります。詳しくは以下の記事で解説しているので、参考にしてみてください。
関連記事:ペルソナとは?DXに欠かせないフレームワークの設定項目を解説
4. ポジショニングマップを作る
続いて、自店舗の立ち位置を把握するためのポジショニングマップを作ります。ポジショニングマップ作りでは、お客さまが飲食店を選ぶ要因(KBF)を軸にします。
「カジュアルとラグジュアリー」「健康志向と味重視」という2セットのKBFを軸にポジショニングマップを作ったところ、次のようなマップが完成したとします。
自店舗にとって最も近い競合店舗はC店ということが判明します。さらに「健康志向×カジュアル」の方向を進めば、競合店舗が少なく一人勝ちできる可能性があることもわかりました、
ただし、隙間の大きいポジションを取ったからといって、それが売上アップにつながるとは限りません。そのポジションに需要と供給のバランスがあるかどうかも、しっかりと見極めながら戦略を考えていきましょう。
5. 競合店舗との差別化ポイントを考える
最後に、STP分析を通じて整理した情報をもとにしながら、競合店舗と差別化を図れるポイントを考えてみてください。ここでは「SWOT分析」というフレームワークでまとめた情報も役に立ちます。SWOT分析は4つのキーワードを軸に、自店舗の強みと弱みという内部環境、機会と脅威という外部環境を整理するフレームワークです。
SWOT分析を実施すると差別化ポイント、DXや集客の方向性などが見えるようになります。以下の記事ではSWOT分析について解説しているので参考にしてみてください。
関連記事:飲食店がSWOT分析に取り組むメリットとは?DX実現のフレームワーク
飲食店がSTP分析を行う際の注意点
STP分析を行う際の注意点とは、このフレーワークを通じて導き出されたDX戦略や集客施策が実現可能とは限らない、ということです。先ほどのポジショニングマップをもう一度ご覧ください。
このマップから、「健康志向×カジュアル」の方向を突き詰めれば競合が少なく、かつ高い需要が狙えることが判明したとします。
しかし、それを実現するだけの資本があるか?どれくらいの費用対効果が狙えるか?などの情報も含めて判断しなければ、実現は困難です。
そのためSTP分析を実施する際は、他のフレームワークも活用しながら情報を整理し、自店舗にとって現実的で実現可能なDX戦略や集客施策を考案しなければいけません。
STP分析で実用的な飲食店のDX・集客を考えましょう
今回は、飲食店のDXや集客に欠かせないSTP分析をご紹介しました。STP分析を用いれば、実用的なDX戦略や集客施策を考案・実行できるようになります。ただし、先ほどのように注意点もあるので、STP分析だけでなく複数のフレームワークを組み合わせていきましょう。