今回は、飲食店のこれからを考えるのに欠かせない「ビジョンシート」の作り方をご紹介します。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
飲食店経営者の多くは、自分の中に明確なビジョンを持っていると思います。
そのビジョンを実現するためにはスタッフの協力が欠かせません。
そこで、ビジョンシートを作成して経営者の頭の中を可視化し、スタッフと共有してみましょう。
ビジョンシートとは「未来の縮尺」である
ビジョンシートとはいわば「未来の縮尺」です。
飲食店としてこうありたい!
最終的にはこんな飲食店になりたい!
といった、経営者の頭の中にあるビジョンを1枚のシートに表し、未来の縮尺を作ります。
「紙1枚では語れない」と思うかもしれませんが、ビジョンシートは1枚の中に書き込むことが重要なポイントです。
経営者のビジョンを1枚の紙に詰め込むためには、複雑なことをシンプルに表現しなければいけません。
しかし、その方がスタッフにとってはわかりやすい表現になり、経営者が描いているビジョンが伝わりやすくなります。
何より、ビジョンシートを読むストレスも軽減されます。
スタッフと共有してこそのビジョンシートなので、1枚の紙に詰め込めるかどうかがビジョンシートの良し悪しを左右します。
ビジョンシートを作るメリット
ビジョンシートを作ると、3つのメリットが得られます。
「やるべきことの明確化」「ビジョンの共有」、そして「初心にかえる」です。それぞれ詳しくご説明します。
やるべきことが明確になる
将来に向けたビジョンを持っている経営者でも、いくつもの情報を頭の中だけで処理するのには限界があります。
目標に向けて最短距離を進むためには、やるべきことを明確にし、優先順位をつけながら取り組まなければいけません。
そのためには頭の中にあるビジョンを一度吐き出し、視覚化し、スッキリとした思考で飲食店経営のビジョンを見つめ直すことが大切です。
ビジョンシートでやるべきことが明確になれば、目標に向けた取り組みがスムーズに進むようになります。
スタッフにビジョンが伝わる
前述のように、飲食店経営のビジョン実現は「スタッフありき」です。
ワンマン操業の飲食店であっても、全ての業務を1人で回せるわけではありません。
飲食店というのは、経営者を手伝ってくれるスタッフの存在がなければ成り立たないビジネスなのです。
経営者が持っているビジョンを実現するにはスタッフの力が必要なわけですから、ビジョンシートを使って頭の中にあるビジョンをスタッフと共有しましょう。
定期的に初心にかえれる
ビジネスでは本来の目的を見失ってしまうことが多々あります。
例えば、「地域に根差し、地域に貢献できる飲食店」を目指して経営者が、日々のビジネスの中で利益追求に走り、これが影響し廃業に追い込まれる飲食店を私は知っています。
経営者として利益を追求することは大切ですが、飲食店としてのバリュー(価値)を定義し、維持・向上に努めるのはそれ以上に大切なことです。
私の経験上、「常に初心を忘れない飲食店」の方が利益追求に走る飲食店よりも息が長く、なおかつ高利益体質なのです。
ビジョンシートがあれば定期的に初心にかえれるので、飲食店経営者ならば作成をおすすめします。
ビジョンシートの作り方
それでは、ビジョンシートの作り方をご紹介します。
難しく感じるかもしれませんが、6つのステップで作成できるのでぜひ実践してみてください。
1. A4紙を1枚用意する
ビジョンシートをA4紙で作るのには理由があります。
A4紙を使う理由
- ちょうど良い情報量で作れる
- 人がよく目にするフォーマットである
ビジョンシートは情報量が多ければ良いというわけではありません。その点、A4紙ならば比較的簡単にちょうど良い情報量で仕上げられます。
また、人がよく目にするフォーマットなので、スタッフと共有することを考慮すれば馴染みのあるA4紙が最適というわけです。
2. メインビジョンを書き込む
A4紙を用意したら、上部中央や左上に「飲食店経営のメインビジョン」を書きましょう。
用紙の20分の1程度のスペースを使って、大きめに書いてください。
メインビジョンは、ビジョンシートを読んだ人が最初に目にする部分です。
書籍ならタイトル、新聞ならメインの見出しにあたります。
そのため、メインビジョンを見て経営者が何を実現したいのかを明確に伝わるようにしなければいけません。一例を挙げてみます。
メインビジョンの一例
- 飲食業界の新しいビジネスモデルを確立する
- 地域に根差し、地域に貢献する飲食店を目指す
- お客さまとスタッフの幸福度の高める飲食店になる
このように、短文ながらある程度具体性を持たせたメインビジョンの方が、ビジョンシートを読んだ人にスパッと伝わりやすくなります。
3. キャッチコピーを書き込む
次に、メインビジョンをもう少し具体的に説明するようなキャッチコピーを書きましょう。
「キャッチコピーなんか作れないよ」と苦手意識を持つ方も多いですが、難しく考えないのがポイントです。
テレビや雑誌で見かけるようなお洒落なキャッチコピーを作る必要はありません。
それよりも、「不器用でも伝わるキャッチコピー」を作ることのほうが大切です。
例えば「お客さまとスタッフの幸福度の高める飲食店になる」というメインビジョンを持っている飲食店なら、次のようなキャッチコピーが考えられます。
私からスタッフ、スタッフからお客さま、お客さまから社会へ。たった1つの飲食店でも、幸福のサイクルを作れば、日本はきっと、今よりも良くなる。
いかがですか?スマートではありませんが、経営者が持っているビジョンや想いがしっかりと伝わるキャッチコピーではないかと思います。
メインビジョンとキャッチコピーのセットで、ビジョンシートが言わんとしていることを全て伝えられるようなものを目指してください。
4. 「なぜ?」を書き込む
次に、経営者が実現したいビジョンに対する「なぜ?」を書きましょう。
つまり、なぜそのビジョンを持っているのか、なぜ実現したいのかという理由です。
ビジョンシートは経営者の頭の中にあるビジョンを単に示すだけではいけません。
そこに納得できる理由がなければ、スタッフの心には刺さりませんし、動いてもくれないからです。
ビジョンシートの「なぜ?」を書くポイントは、1つのストーリーにすることです。
経営者がビジョンを抱えるにあたって、どのような経験が影響しているのか、その想いはどこから来ているのか、これを1つのストーリーとして書いていきます。
必然的に「なぜ?」はビジョンシートの中で最も文字数の多い部分になるでしょう。
ビジョンシート全体の構成を考えると、300~500文字程度にまとめるのがベストです。
5. 「価値」を書き込む
次に、ビジョンを実現する「価値」を書きましょう。
経営者の頭の中にあるビジョンが実現すると、何が良いのか?誰にどう貢献できるのか?などをまとめていきます。
また、「自分」「スタッフ」「お客さま」「社会」という4つの視点からまとめられると、納得感のあるビジョンシートに仕上がります。
自分本位ではなく、スタッフやお客さま、そして社会のためになるようなビジョンを持ちましょう。
6. 「戦略」を書き込む
最後に、ビジョンを実現するための「戦略」を書きましょう。
ビジョン実現に向けてさまざまな戦略が考えられるため、全てを書き込む必要はありません。
大まかな戦略を示すだけの方が、伝わりやすいビジョンシートになります。
細かい戦略に関してはマインドマップを作成するなどして、別途まとめることをおすすめします。
>>マインドマップの作り方動画を貼り付ける
関連記事:飲食店はマインドマップの作り方を知り、DXビジョンを従業員と共有しよう
ビジョンシート作りで大切なポイント
それでは最後に、ビジョンシートを作る上で大切なポイントについてご紹介します。
3つのポイントを守るだけで、初めてビジョンシートを作る方でも敷居を低く感じられるので、ぜひ意識してみてください。
A4紙は必ず1枚だけ用意する
ビジョンシートを作る際は、A4紙を1枚だけ用意します。
もちろんA4紙を1枚だけ購入することはできないので、「目の前に用意するA4紙は1枚だけ」という意味です。
ビジョンシートを作るにあたってA4紙を何枚も用意してしまうと、「心の甘え」が出てしまうことがあります。
「何枚もあるから何度でもやり直せる」と、ビジョンシート作りに対する真剣さが薄れてしまうのです。
これに関してはさまざまな意見・やり方があると思いますが、私個人的には目の前にA4紙を1枚だけ用意し、「そこに全てを書き込む」という気持ちで取り組んだ方が、良いビジョンシートが完成しました。
綺麗に書こうとしない
ビジョンシートを作る理由は、経営者の頭の中にあるビジョンを視覚化し、スタッフと共有することです。
「お洒落なビジョンシートを作ること」ではありません。
つまり、ビジョンシート作りはあくまで「手段」であり、それ自体が目的になってはいけないのです。
このポイントは強く意識しないと、手段と目的が逆転してしまい、伝わらないビジョンシートに仕上がってしまう可能性が高いので注意してください。
考え過ぎて書かない
ビジョンシート作りは考えすぎると、どんどん行き詰まっていきます。
「自分の頭の中のビジョンを明確にしよう」と意気込んでしまうほど、何を書けばいいかわからなくなってしまうのです。
そのため、「考えすぎないこと」が大切です。
まずは、普段頭の中にあるビジョンをポンポンと書き出してみるのも良いでしょう。
私の場合、A4紙を1枚しか用意しませんが、何度も消しては書き直したりします。
完成したビジョンシートは到底綺麗とは呼べませんが、しっかりと伝わるビジョンシートに仕上がっています。
ビジョンシートで飲食店の未来を見える化しましょう
飲食店経営に対するビジョンシートを作ると、スタッフへの伝わりやすさや、思考のスッキリさが本当に変わるのでぜひ作成してみてください。
完成したビジョンシートは、常に自分の目に留まる場所に掲示すれば、いつでも初心にかえってビジネスを推進することができます。