飲食店が今すぐ始めるべきDXとは?7つの理由と4つのメリット
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性が説かれるようになってから5年以上が経過しています。そんな中、飲食業は他の業界に比べて、DXがまだ浸透していません。しかし、コロナ禍やインバウンド需要の低下などを背景に、今こそ「飲食店DX」を推進するときです。
そこで今回は、飲食店がDXを今すぐ始めるべき7つの理由と、飲食店DXでもたらされる4つのメリットをご紹介します。
目次
1. DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何か?
2. コロナ禍を背景に飲食店DXに注目が集まる
3. 飲食店のこれからにDXが欠かせない7つの理由
3.1. インバウンド需要は当分見込めない
3.2. 従来のやり方で売上を伸ばすのは難しい
3.3. ブランディングに取り組む必要がある
3.4. 飲食業界は慢性的な人材不足に陥っている
3.5. デジタル活用を進める飲食店が増えてきた
3.6. 新しいビジネスモデルを確立する
3.7. メタバースなどのトレンドを取り入れる
4. 飲食店がDXに取り組むつのメリット
4.1. 固定費を削減できる
4.2. 優先度の高い仕事に集中できる
4.3. お客さまデータの収集と活用
4.4. お客さまとのコミュニケーションを促進
4.5. 結果、集客力と売上がアップする
5. 飲食店DXの第一歩を踏み出しましょう!
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何か?
こんにちは。
武野 慎一郎です。
初めに「そもそもDXとは何か?」を整理していきます。
DXとは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略です。直訳すると「デジタルによる変身」ですが、日本では「デジタルによるビジネスの変革」と訳されることが多いです。
DXは単なるIT活用かといえば、そうではありません。“変革”というからには、デジタル技術を駆使したビジネスや組織の大きな変化を意味します。今のところDXに明確な定義はありませんが、総務省では次のように説明しています。
“デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念である” –総務省『令和3年版 情報通信白書 デジタル・トランスフォーメーションの定義』より
つまりDXと呼べるのは、上記のように新しい商品やサービスの提供、ビジネスモデルの開発、組織文化などの変革をもたらすような取り組みに限られています。
そしてまさに今、飲食店でもDXに取り組もうとする企業が続々と増えています。
コロナ禍を背景に飲食店DXに注目が集まる
飲食店DXに注目が集まった最初のきっかけは「コロナ禍」でした。主要都市がほとんどロックダウン状態に陥り、午後9:00には寝静まった街の風景はまだ記憶に新しいでしょう。飲食店経営者にとって、これほど苦しい社会現象はかつてなかったはずです。 実際私の店舗もかなりのダメージを受けました。
一方で、コロナ禍は飲食店がDXと正面から向き合うための重要な機会にもなりました。 デジタルに対する感度の高い飲食店は早々にDXへ取り組み、それによる成功事例も増えています。
そしてコロナ禍が落ち着きを見せ始めた2022年、外食需要が回復してきたからといって安心はできません。なぜなら、DXに取り組む飲食店が以前よりも増えており、今後は「デジタル競争」と呼べるほどの、デジタル技術を駆使した飲食店の市場競争が激化すると考えられているからです。
飲食店のこれからにDXが欠かせない7つの理由
とはいえ、「今までのやり方で何がいけないのか?」と飲食店DXに疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。それでは、なぜ飲食店DXが欠かせないのかを説明する7つの理由をご紹介します。
インバウンド需要は当分見込めない
訪日外国人数は少しずつ増えていますが、コロナ禍以前の水準に回復するまでまだ数年はかかるでしょう。
日本政府観光局が発表した2022年上半期(1~6月)の外国人観光客は50万7,600人でした。一方、コロナ禍以前である2019年上半期の外国人観光客は1,663万3,614人です。つまり、現在のインバウンド需要はコロナ禍以前の3%ほどしかありません。
出典:日本政府観光局『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』
インバウンド需要がコロナ禍以前の半分程度に回復するだけでも今後数年はかかるでしょう。
従来のやり方で売上を伸ばすのは難しい
コロナは外国人観光客だけでなく、日本人観光客にも影響を与えています。そのため、土日祝日や長期休暇、年末年始といった繁忙期に帳尻を合わせるような従来のやり方では、売上を伸ばすのが難しい状況です。
これからの飲食店には、従来のような繁忙期に頼ったやり方ではなく、デジタル技術を駆使した集客・マーケティングや、お客さまとのコミュニケーションを大切にした新しい取り組みが求められています。
ブランディングに取り組む必要がある
ブランディングとは、飲食店を1つのブランドとして成長させる取り組みです。飲食業は今後、ブランド力の重要性がさらに増していくと考えています。
なぜなら、SNSで世界中の人が繋がれるようになった時代では「良い体験をSNSで共有できる」という新しい価値基準がお客さまの中に生まれたからです。そのため、多くのお客さまは料理の味や接客の質だけでなく「あのお店に行った」という体験価値を重視するようになりました。
ブランド力のある飲食店なら、それだけでお客さまは足を運びたいと考えます。もちろんリピーター作り、ファン作りにも貢献するので、これからの飲食店はDXへ取り組みブランディングに力を入れるべきだと言えます。
飲食業界は慢性的な人材不足に陥っている
中小企業庁が発表した『令和3年度(2021年度)の中小企業の動向』によれば、2009年頃をピークに「人材が不足している」と考える飲食店が増え続けています。
飲食店の人材不足が叫ばれるようになって久しいですが、この問題が緩和される見込みはありません。少子高齢化はこれからも加速し、慢性的な人材不足は飲食業だけの問題ではなくなっていくからです。
したがって、デジタル技術を駆使した効率化による業務プロセスの変革はますます重要になります。
デジタル活用を進める飲食店が増えてきた
「デジタル活用で市場シェアを獲得する飲食店が増えてきた」というのも、多くの飲食店がDXを進めるべき理由の1つです。
デジタル技術を駆使して市場構造そのものを変えてしまう変革を「デジタル・ディスラプション」と呼びます。かつて小売業ではAmazon.comが市場構造を覆し、Uberはドライバーやデリバリーに対する需要に変革を起こしました。
こうしたデジタル・ディスラプションが飲食業でも起これば、DXを進めていない飲食店はあっという間に淘汰される可能性が高いのです。
新しいビジネスモデルを確立する
コロナ禍でも新しいやり方で売上を伸ばす、あるいはデジタル・ディスラプションに耐えられる体質を作るために、自ら新しいビジネスモデルを確立することも必要です。
例えば近年では「クラウドキッチン」と呼ばれるビジネスモデルが始まっています。クラウドキッチンとは、いわゆるデリバリー専門の飲食店です。「飲食スペースもテイクアウトもなくデリバリーだけ」というのは斬新なビジネスモデルですが、コロナ禍以降のUber Eats流行を背景に、効率的な経営体系として注目されています。
DXを進めれば、こうした新しいビジネスモデルの確立も難しくはありません。
メタバースなどのトレンドを取り入れる
メタバースとは、たくさんの人が行き来しコミュニケーションが取れる仮想空間のことです。近年ではメタバース内への出店も始まっています。
例えばメキシコ料理の大手チェーンであるチポトレ、ハンバーガーチェーンのウェンディーズはメタバース内に出店し、仮想店舗でコードを受け取ると実店舗で食事ができるようになるサービスを提供しています(BUSINESS INSIDER投稿記事より)。
メタバースなどのデジタル・トレンドは今後加速していくと考えられているため、DXでそうしたトレンドを取り入れられれば他店舗との差別化を図れます。
以上のように、飲食業を取り巻く環境やさまざまな社会情勢を背景に、飲食店にはDXが強く求められる時代になりました。
飲食店がDXに取り組む4つのメリット
飲食店がDXに取り組むメリットは4つあります。いずれも売上アップやお客さまのリピーター化などに欠かせない要素なので、ここでご紹介します。
固定費を削減できる
売上がアップすると下がる原価とは何でしょうか?そうです、「固定費」です。固定費の大半は人件費であり、その他には店舗賃料や設備費などがあります。
DXを推進しデジタル技術による業務効率化に成功すれば、雇用そのもののニーズが減ります。つまり直接的な人件費削減になるわけです。加えてDXによる売上アップに成功すれば、人件費やその他の固定費は相対的に下がるため、利益率がアップします。
一昔前に「100円マックでなぜ儲かるのか?」が話題になりましたが、これは販売個数が多くなるほど固定費が下がる原理を応用したビジネス戦略でした。商品原価に占める変動費の割合が低いほど、このビジネス戦略は有効です。
優先度の高い仕事に集中できる
DXを推進すると、パソコン上で行う業務はどんどん効率化されていきます。そして残るのは、接客や商品開発といった、人でしか対応できない仕事です。
そうしたクリエイティブな仕事こそ飲食店が優先度を高めて取り組むべき仕事です。しかし、多くの飲食店において、店長クラスは売上集計などの事務作業に忙しく、クリエイティブな仕事に集中できません。
DXで優先度の高い仕事に集中できる環境を整えることは、飲食店の生き残りをかけた取り組みになっていくでしょう。
お客さまデータの収集と活用
お客さまから得られるデータはまさに宝の山です。商品開発、接客の質向上、経営体制の見直しなど、飲食店のあるべき姿をお客さまデータが全て教えてくれます。しかし、ほとんどの飲食店ではお客さまデータを収集・活用する仕組みがありません。
実はちょっとしたDXを推進するだけで、月間1,000件以上のお客さまデータを収集できます。大量のお客さまデータがあれば従来とは全く違ったアプローチでの飲食店経営が可能になります。
お客さまデータの収集と活用こそが、DX最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。
お客さまとのコミュニケーションを促進
接客とはあくまでお客さまへのサービス提供であり、お客さまとのコミュニケーションではありません。
お客さまとのコミュニケーションとは、「接客外でお客さまに“また来店したい”と思わせるような質の高いやり取り」を指します。それはお客さまとのちょっとした会話だったり、SNSなどのデジタルツールを活用したものだったりします。
質の高いコミュニケーションを取り続けられれば、リピーター化やファン化は必ず達成できます。そのためにもDXによる業務効率化や、お客さまとの接点を増やす取り組みが欠かせないのです。
結果、集客力と売上がアップする
飲食店がDXを推進する4つのメリットにより、最終的には「集客力と売上のアップ」を実現できます。これこそが多くの飲食店が求めている結果であり、今すぐにでも始めるべき取り組みではないでしょうか。
飲食店DXの第一歩を踏み出しましょう!
DXと聞くと、なんだか拒否反応が出てしまう飲食店経営者は多いかもしれません。しかし、「千里の道も一歩から」といいます。どんなに長い道のりも、勇気を持って最初の一歩を踏み出せば、あとは自然と歩めるものです。もちろん、DX推進はそこまで長い道のりではないのでご安心ください。
まず大切なことは、DXの意味とその重要性を理解することです。この記事がその助けになったのであれば幸いです。
ディスクリプション
この記事では、これからの飲食店経営に欠かせないDXについて解説します。DXとは何か?なぜ必要なのか?を知り、飲食店DXに向けた第一歩を踏み出しましょう。