飲食店がDXを進めるにあたって、参考になる事例情報を吸収するのは大切なことです。事例からDXのイメージを具体的に膨らませて、戦略立案へ落とし込んでみましょう。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、飲食店のDX事例4線と、私たちが取り組んだDX事例についてご紹介します。DXを進めたいが何をすればいいかわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店のDX事例4選
今回ご紹介するのは、施策効果の高い4つのDX事例です。各事例の概要や、実施時のポイントについても解説していきます。
1. モバイルオーダーで待ち時間ゼロ
モバイルオーダーは今や、多くの飲食店で導入されています。数年前まで大手飲食店で利用できるサービスという認識がありましたが、現在ではモバイルオーダー機能を搭載したレジツールの普及により、中小飲食店でも導入が進んでいます。
モバイルオーダーは待ち時間をゼロにすることで顧客満足度を高められます。さらに、オーダーにかかる手間を削減できるため、業務効率も追求できる有用なDX施策です。
モバイルオーダーを導入する場合は「お客さまの使いやすさ」と「データ活用の有無」を意識しながら、自店舗に合ったツールを選びましょう。
2. 配膳自動化で業務効率をアップ
近年、大手飲食店を中心に配膳ロボットが普及しています。ハイエンドな製品を購入すると数百万円のコストがかかりますが、中には月々5〜10万円前後でレンタルできる配膳ロボットもあります。
ホールスタッフ1人あたりの人件費を23万円とすると、配膳ロボットの導入で1人分の労働力を削減できれば10〜18万円前後の人件費削減になります。さらに、従業員の業務効率アップにつながり、接客など飲食店にとって重要な部分に注力できるようにもなります。
配膳ロボットは割安でお試しレンタルできるサービスが多いので、一度導入してみて効果検証を行うことが大切です。
3. 集客販促ツールで来店率をアップ
集客販促ツールとは、主に次のようなITツールのことです。
- アンケートツール
- メール配信ツール
- SNSツール
- ブログツール
こうしたITツールを活用することで集客効果を高め、新規来店数のアップだけでなく、お客さまのリピーター化にも有効です。とくにアンケートツールやメール配信ツールなど、お客さまと直接コミュニケーションが取れるITツールは集客効果が高いだけでなく、データを活用して魅力的なメニュー開発やお客さま分析が行えます。
昨今、食べログなどのグルメサイトへの登録だけでは、集客における競合優位性を確保できません。集客販促ツールを積極的に利用して、ITツールとの相性を確かめたり、改善サイクルを回して施策効果をどんどん高めていったりする取り組みが必要です。
4. AIの売上予測で発注費用を削減
AI(人工知能)と聞くと飲食店とは無関係な技術のように思うかもしれませんが、AI活用の幅は広がっています。ちなみにここで言うAIとは、「データ分析に特化したAI」のことです。
過去の売上データや仕入れデータを大量に取り込めば、AIが自動的に分析して最適な仕入計画を立ててくれます。無駄なく仕入れられるため、発注費用の削減につながり、材料切れによる機会損失も防げる可能性があります。
将来的には、AIカメラが食事中のお客さまの表情を認識・分析し、メニューごとの満足度をスコアリングできるようになるでしょう。
私たちが実際に行ったDX事例
私達のお店で実践したDX事例を少し紹介したいと思います。
まず簡単なところから手をつけました。社員全員にGmailを取得してもらい、GoogleWorkspaceを使用して、書類を全て共有するところからスタートしました。原価管理表、売上目標、売上管理表、レシピ集からメニューの写真まで、あらゆるデータをクラウド上で管理し社員間で共有するようにしました。
今まで各店舗でバラバラだったデータを一元管理することで整理整頓もでき、どこからでもアクセスできるようになりました。 これも立派なDX事例ですね。このような部分から取り組むと進めやすいかもしれませんね。
もう一つ別の例をあげると、店舗でお客様に記入してもらうアンケートのデジタル化です。飲食店経営でお客様の声は非常に大切です。その声を拾い上げる為により良いシステムを作りたいと考えていました。
そこで私がお店に取り入れたのはtypeformというツールを使用して、デジタルアンケートシステムを作成しました。このアンケートは一問ー答形式でお客様に手軽にスマホで記入して頂くことができ、さらに集計まで自動で行ってくれます。 机の上にアンケート用紙や、記入用の筆記用具を置く必要もなく、さらに集計時間も省いてくれる優れものです。 このデジタルアンケートの作成方法はまた別の動画で説明しているのでそちらで興味がある方はそちらをご覧ください。
DX事例を参考にする際のポイント
DX事例を参考にする場合、2つのポイントを意識しなければいけません。
- DX推進のイメージを膨らませる
- 全く同じDX推進はないと理解する
これらのポイントを意識しないと、DX事例を参考にしても自店舗のDXがうまく進まない可能性があります。では、2つのポイントを解説します。
DX推進のイメージを膨らませる
DX事例を参考にする際は、DX推進のイメージを具体的に膨らませることが最も大切です。例えば、「モバイルオーダーで待ち時間ゼロ」というDX事例の中にも、さまざまなタイプが存在します。
最初から待ち時間ゼロによる満足度アップを狙っていたのか、あるいはオーダー効率化を中心目的とした際の副次的な効果だったのか、そうした違いを読み取りながら自店舗におけるDX推進のイメージを膨らませてみましょう。
DX事例は自店舗に落とし込んでこそ意味があります。そのためにも、自店舗と同じような規模、同じような課題を抱えている飲食店のDX事例を参考にしてみてください。大手飲食店のDX事例を参考にするのもよいですが、資本に大きな違いがあるとそもそも参考にならないケースがあります。
全く同じDX推進はないと理解する
もう1つのポイントは、参考にしたDX事例をそのまま実行してはいけないことです。同じような規模、同じような課題を抱えている飲食店でも、全く同じ飲食店は存在しません。つまり、全く同じDX推進も存在しないのです。
DX事例を参考にする目的は「DX推進のやり方や効果を幅広く知り、自店舗の課題に落とし込むこと」です。そのため、参考にしたDX事例をそのまま実行してしまうと、必ずどこかに歪みが生じます。
「全く同じDX推進はない」と理解し、DX事例はあくまで参考にとどめるということを忘れないでください。
DX事例を参考に飲食店DXを推進しましょう
飲食業のDXはまだ始まったばかりなので、他業界に比べると参考になるDX事例は少ないかもしれません。それでも、中小飲食店の中でDX推進が広まり、参考になるDX事例はいくつかあります。
さまざまなDX事例を参考にしながら、自店舗におけるDX推進に落とし込み、施策効果の高いDXを推進していきましょう。