飲食店のサブスク導入が増えている中、「サブスクって良いの?大変じゃない?」と疑問を持っている飲食店経営者は多いでしょう。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、飲食店が導入するサブスクのメリット・デメリット、さらにサブスクを導入する際のポイントについてご紹介します。
新たなビジネスモデルとしてサブスクが気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
サブスク(サブスクリプション)とは?
サブスクとは、毎月定額で特定のサービスを提供するビジネスモデルのことです。
もともとはインターネット上で提供されるクラウドサービスを採用するビジネスモデルでしたが、近年ではオンラインに限らずリアルにおいてもサブスク導入が進んでいます。
毎月定額で新車に乗れる、毎月定額で好きな洋服を着れるなど、あらゆる分野でサブスクが浸透しています。
飲食店におけるサブスク導入はむしろ遅れている方で、今後は飲食業界でもサブスクが盛り上げっていくのではないかと考えています。
飲食店がサブスクを導入するメリット
では、飲食店がサブスクを導入するメリットとは何なのか?
ここでは飲食店がサブスクを導入すると得られる3つのメリットをご紹介します。
収益が安定する
サブスク導入は収益を安定させるきっかけになります。
3,000円のサブスクを100人のお客さまが利用すれば、毎月30万円の収益は確実に確保できます。
飲食店にとって「安定した収益がある」ということは精神的な安心につながり、経営に対してリラックスした状態で向き合うことができるでしょう。
ただし、サブスクだけで高い収益を確保できるケースは稀なので、サブスクに加えて「ついで買い」などの戦略を取り入れるのが基本です。
固定客を確保できる
毎月定額でフードやドリンクが頼み放題になるということから、固定客を確保できる可能性が上がります。
固定客ができればお客さまをファン化できるチャンスも増えるので、飲食店のブランド力を高めるきっかけになるでしょう。
ただし、「サブスクによる固定客はリピーターではない」ということも覚えておいてください。
お店そのものの魅力よりもサブスクを目的に契約している可能性が高いため、そうした固定客もリピーターやファンとして考えてしまうと、ある日突然経営が難しくなる可能性があります。
顧客リストを取得できる
サブスクを導入している飲食店では、お客さまアンケートなどを実施しなくても自然とお客さま情報を収集できる仕組みが整います。
また、サブスクシステムを導入し、お客さまの来店頻度や注文内容などをデジタルで管理できるようになれば、お客さま分析などを実施して集客戦略に役立てることも可能です。
飲食店がサブスクを導入するデメリット
飲食店のサブスク導入にはメリットがありますが、デメリットもあります。
ここではサブスク導入による4つのデメリットをご紹介します。
企画・実施に時間がかかる
サブスクでしっかりと収益を確保するためには、入念な企画と、慎重な実施が欠かせません。
そのためサブスク導入には時間がかかり、そこに発生するコストについても把握しておきましょう。
ターゲットリサーチやシステムの選定、お客さまへの周知やサービスページ制作など、サブスク導入でやるべきことはたくさんあります。
まずはサブスク導入にあたって必要な作業などについて整理してみてください。
システム導入を伴う
サブスク導入ではシステムを導入するパターンと、システムを導入せずに飲食店独自に管理するパターンがあります。
後者の場合、紙の会員証などを発行することになるため、複製のリスクが生まれます。
また、お客さま情報をアナログで管理するためデータを活用できないなどの問題もあります。
そのためサブスク導入ではシステムを導入するパターンが一般的です。
システム導入には当然コストが発生するので、システム導入にかかる費用などはしっかりと把握しておきましょう。
採算が合わない可能性がある
飲食店のサブスク導入は、サブスクのみで収益を確保しようとすると採算が合わなくなる可能性があるため注意してください。
「収益が安定する」ことをメリットとしてご紹介しましたが、これはあくまでも「ついで買い」などの戦略も含めた話です。
サブスクのみで収益を確保している飲食店というのは、実はかなり少数派です。
たとえば完全会員制の「29ON(ニクオン)」さんは、年会費を支払うと定額でコース料理が食べられるサブスク導入店として有名です。
一方で、焼かない焼く肉屋としてロースターや排気口などの設備投資をグッと抑えて経営しており、1コースのみの提供で在庫ロスを限りなくゼロに抑えているからこそサブスクだけで高い収益性を確保しています。
一般的な飲食店がサブスクを導入する場合、「ついで買い」などの戦略を取り入れなkれば高い収益性は確保できず、採算が合わなくなる可能性があります。
キラーメニューによる差別化が難しい
飲食店にはそれぞれキラーメニューがあります。
キラーメニューは「この料理といったらあのお店」と飲食店のブランドを連想させる力と、お客さまを惹きつける力を持っています。
しかし、サブスク導入により定額で食べ放題になると、キラーメニューは他のメニューとの差別化が難しくなり、飲食店がこれまで築いてきたブランド力を失う可能性もあるので注意してください。
そのためドリンクをサブスク制にする、一部のキラーメニューは有料にするなどの戦略を検討してみましょう。
飲食店がサブスクを導入するポイント
飲食店がサブスクを導入するにあたって、いくつか重要なポイントがあります。
既存のメニューを単純にサブスクとして提供するのではなく、以下のポイントを意識して利益率の増加や業務効率化を目指しましょう。
原価の平準化を取り組む
飲食店のサブスクには収益が安定するなどのメリットがありますが、前述のように採算が合わない可能性も考えられます。
そうした事態を回避するためには「原価の平準化」へ取り組むのが1つのポイントです。
利益率の高いメニューAと、利益率の低いメニューBがあったとして、メニューBの方が多く注文されればお店の収益は当然少なくなります。
しかしメニューAとメニューBの利益率が限りなく同じなら、どちらが多く注文されても収益の絶対値を下げることにはなりません。
原価の平準化へ取り組むためには仕入れ先の再考を行ったり、調理プロセスを見直したり、さまざまな方法が考えられます。
料理の質を落とさずに利益率を高めるためには、食材の質をそのままにより安く取引できる仕入れ先を探したり、大量購入によるディスカウントを交渉するなどを優先的に検討しましょう。
「ついで買い」を促す
飲食店が実施するサブスクの基本戦略として「ついで買い」を検討してみてください。
たとえばある飲食店では、ドリンクのサブスクを提供しています。
ドリンクが1杯2杯と注文されればそれに応じて料理が注文される回数も増えるため、「ついで買い」による収益が増えていきます。
実は、サブスクに「ついで買い」の戦略を取り入れている飲食店では、「ついで買い」による収益が50%を超えることも少なくありません。
そのため飲食店によってはサブスクで高い収益を確保しようとするのではなく、「ついで買いを促すためのサブスク」という戦略を立てる方が、高い収益を確保できる可能性があります。
システム導入は必須と考える
飲食店がサブスクへ取り組むにあたって、システム導入は必須だと考えましょう。
独自に紙の会員証などを発行すると複製されるリスクがあります。
また、発行や更新の手間がかかり、会員証を紛失してしまうお客さまも少なくないため再発行にも手間がかかります。
一方、サブスクに必要なシステムを導入すれば、スマートフォンを会員証代わりに利用できるだけでなく、サブスク登録したお客さまの情報を収集・分析し、飲食店の経営改善に役立てることもできます。
サブスクへ取り組むにあたっての手間や課題は、システム導入によって解決できる部分が多いため、システム導入は必須だと考えてください。
結論:飲食店のサブスク導入は慎重に
ここまでサブスクのメリットやデメリット、導入のポイントについてご紹介しました。
結論として私が言いたいことは「飲食店のサブスク導入は慎重に行いましょう」ということです。
確かにサブスク導入によって高い収益性を確保し、ビジネスモデルとして確立している飲食店は存在します。
しかし、飲食店の営業形態や所在地などにより、サブスクを導入する利点が薄いケースも少なくありません。
たとえば私のお店は観光地にあるという特性上、リピーターさまよりも新規のお客さまが多いため、サブスクを導入する利点が薄いと考えています。
それでもサブスクを導入すればリピーターを増やす施策にはなるでしょうが、サブスクにかけるコストをお店のホスピタリティ向上に費やす方が、お客さまにもお店にもメリットが多いというのが、サブスクを導入しない理由です。
これを踏まえて、私が考えるサブスク導入を検討すべき飲食店の特徴をご紹介します。
- お店の所在地が都市部にありアクセスしやすい
- 「ついで買い」による高い収益が見込める
- サブスク導入にかかる初期費用をカバーできる体力がある
- サブスク会員を増やす施策を考えられる
- サブスクによるトラブル・リスクを想定できる
ただし、上記に当てはまるからといってサブスク導入が正解とは限らないので、やはりサブスク導入は慎重に検討しましょう。
飲食店のサブスク成功事例もあります
焼肉、コーヒー、お酒などなど、最近では飲食店のサブスク成功事例が少しずつ増えています。
そのため「サブスクは良いビジネスモデルなんだ」と考えがちですが、実際は飲食店によって相性が違うので、その点をしっかりと見極めた上でサブスク導入を検討しましょう。