自店と他店の立ち位置をはっきり理解している飲食店経営者は、私の経験上「強い集客体制」を持っています。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、自店と他店の立ち位置を明確にできるポジショニングマップの作り方をご紹介します。ポジショニングマップを作れば、飲食店の集客について改めて考えるきっかけになります。さらに、STP分析など他のフレームワークにも活用できるので、ぜひ参考にしてみてください。
ポジショニングマップとは?
ポジショニングマップとは、ある市場において自店と他店の立ち位置を図として表す、集客のフレームワークです。「百聞は一見にしかず」ということで、こちらのマップをご覧ください。
これは、縦軸に「カジュアルとラグジュアリー」、横軸に「健康志向と味重視」という4つの要素を置き、周辺にある飲食店をマッピングしたものです。
自店と他店の立ち位置をなんとなく、感覚的に理解されている方も多いでしょう。しかし、頭の中で整理した情報だけを使い、自店と他店の差を明確にしたり、有効的な集客を考えるのは困難です。
ポジショニングマップはいわば、「あなたの頭の中にある市場マップを図にしたもの」です。自店と他店の立ち位置をよりはっきりと理解でき、思考の整理に役立ちます。
ポジショニングマップは「軸決め」が肝心
ポジショニングマップを作る上で一番肝心なことは、「軸決め」です。先ほどのマップでは、「カジュアルとラグジュアリー」「健康志向と味重視」という2セット4要素を軸にして飲食店をマッピングしています。
この軸決めがなぜ肝心かというと、縦軸と横軸のいずれかを少し変えただけでマップが大きく変化するからです。
言い換えれば「縦軸と横軸にどんな要素を置くか?」により分析できる事柄が変わり、その結果に応じて導き出される集客施策も異なる、ということになります。
そのためポジショニングマップでは、飲食店ビジネスと直接繋がりのある要素であり、なおかつ自店と他店の立ち位置を正確に再現できる要素を慎重に選ばなければいけません。
「戦わずして勝てる集客」のために
皆さんは、「戦わずして勝つ集客」とはどのようなものだと思いますか?私の答えは「自動化された集客」です。
孫氏の兵法に「百戦百勝は、善の善なるものに非ず」という言葉があります。これは、「100回戦って全勝したからといって、褒められたものではない」という意味です。そして「真の勝利は戦わずして勝つこと」と、説いています。
戦いに勝っても負けても必ず損害を伴います。飲食店の話として考えれば、他店と競うような集客はたとえ勝てたとしても、無傷では済みません。
費用を投じ、時間と労力を割き、それによって得られる集客効果は果たしてどれくらいのものでしょうか?
飲食店の集客では「戦わずして勝つ集客」が鉄則です。そのためには集客を練り直し、口コミが自動的に生まれる仕組みを作り、施策が自律するような集客を考えなければいけません。
そのためにポジショニングマップを作り、自店と他店の立ち位置を把握する必要があります。
飲食店集客の要になるポジショニングマップの作り方
それでは、ポジショニングマップの作り方をご紹介します。難しいフレームワークではないので、ぜひ実践してみてください。
1. KBF(購入決定要因)を整理する
お客さまが飲食店を選ぶときに重視する要素のことを「KBF」といいます。先ほどご紹介した「カジュアル・ラグジュアリー・健康志向・味重視」という4つの要素もKBFです。まずは、このKBFを考えられる限り挙げていきましょう。
<飲食店のKBFとして考えられる項目>
- ランチの価格
- ディナーの価格
- 料理の味
- 料理の種類
- 料理の見た目
- お酒の種類
- お酒の価格
- 店内の雰囲気
- 店内の衛生面
- 駐車場の有無
- 駅からの距離
また、どういった切り口でKBFを考えるかも重要です。例えば、地域周辺にあるイタリアンレストランに限定したポジショニングマップを作る際は、ピザ・パスタ・ワインなど、粒度の細かいKBFを整理しなければいけません。
2. 自店と他店のKBFの比較表を作る
考えられるKBFを整理したら、自店と他店の情報をまとめて比較表を作ります。
3. ポジショニングマップの軸を決める
KBFを整理できたら、ポジショニングマップの軸になる要素を決めます。まずは練習だと思い、適当な要素を軸に決めて、ベースになるマップを作ってみましょう。
例えばお酒に力を入れている飲食店なら、まずは「お酒の種類」と「お酒の価格」を軸にしたマップを作ってみます。
ただし、あくまで練習なのでこのマップをもとに集客戦略を考えてはいけません。ポジショニングマップで価格を軸に入れると、「より安く提供する」または「より品質を高める」という、二者択一に陥りがちです。
すでにご説明したように、ポジショニングマップでは軸決めが肝心です。価格という軸に縛られず、柔軟な発想でさまざまなKBFを軸にしてみてください。
4. 自店と他店の特徴をマッピングする
最後に、自店と他店の特徴をマッピングします。マッピングを行うにあたって、他店の情報収集が欠かせません。
情報収集のやり方は「実地調査」と「インターネット調査」があります。実地調査を行うのが理想ですが、他店の経営者と繋がりがある方にとっては難しいでしょう。そうした方はインターネットやSNSを活用して他店情報を収集してください。
最近ではインターネットやSNS上で膨大な量の情報が生まれているため、実地調査を行わなくても十分な情報量を得られるケースが少なくありません。
【重要】ポジショニングマップを作ったらビジネス戦略を考える
ポジショニングマップを作る上で大切なのは、作成後のビジネス戦略まで意識することです。せっかくマップを作ったのですから、自店と他店の立ち位置を眺めるだけでなく、しっかりとビジネス戦略につなげていきましょう。
その際に役立つフレームワークが「STP分析」です。STP分析は「セグメンテーション」「ターゲット」「ポジショニング」という3つの要素から情報を整理し、ビジネス戦略を考えられます。「ポジショニング」の要素からも分かる通り、ポジショニングマップの活用が欠かせません。
ポジショニングマップを作る際は、STP分析などその先にあるフレームワークも意識しながら取り組んでみてください。
関連記事:集客が上手くいく飲食店のSTP分析とは?
飲食店がポジショニングマップを作る際の注意点
それでは最後に、飲食店がポジショニングマップを作る際に注意すべき点をご紹介します。
最初にターゲットを明確にする
ポジショニングマップを作る際は、まず自店のターゲットを明確にしてください。なぜなら、家族客がターゲットなのか、おひとり様客がターゲットなのかにより選ぶべきKBFが変わるからです。
ターゲットを決める際は「ペルソナ」というフレームワークを活用しましょう。ペルソナは飲食店にとって理想のお客さま像を作り上げるためのものです。ペルソナでターゲットを明確にし、その上でポジショニングマップを作るとマップの精度がかなり上がります。
関連記事:ペルソナとは?DXに欠かせないフレームワークの設定項目を解説
優先度の低いKBFを軸にしない
ポジショニングマップ作りで最も注意すべき点は、優先度の低いKBFは軸として選ばないことです。
例えば家族客をターゲットにした飲食店の場合、「店内の広さ」などが重要なKBFとして考えられます。一方、ターゲットがおひとり様客なら「店内の広さ」はさほど重要なKBFではありません。
しかし、優先度の低いKBFを軸にしてもポジションマップは作成できますし、一見すると自店と他店の立ち位置がはっきりして集客に役立ちそうに感じられます。これがポジショニングマップの大きな落とし穴であり、強く意識していただきたいポイントです。
相関関係のあるKBFはまとめる
KBFの中で相関関係があると考えられるものはまとめてしまいましょう。例えば「価格」と「品質」は一般的に相関関係があると考えられるので、これらのKBFを軸にすると決まり切ったポジショニングマップにしかなりません。
相関関係のあるKBFを軸にすると、必ずこのような右肩上がりのマップになります。これでは自店と他店の立ち位置ははっきりしませんし、情報が不足してビジネス戦略を考えられないため注意してください。
ポジショニングマップは複数作る
1つのポジショニングマップに設定できるKBFは2つのみです。そのため、1枚のマップだけで自店と他店の立ち位置を分析するのは難しいでしょう。ポジショニングマップを作る際は、必ず複数作りましょう。3枚のマップを作れば6つのKBFを軸にした情報分析が行えますし、5枚のマップなら10のKBFを軸にできます。
このようにポジショニングマップが多いほど軸にできるKBFも増えるので、必ず複数作るようにしましょう。
ポジショニングマップで飲食店集客の基盤を作りましょう
今回は自店と他店の立ち位置を把握するためのポジショニングマップをご紹介しました。このフレームワークを使うと、自店の立ち位置を見える化するだけでなく、STP分析など他のフレームワークを補足することができます。飲食店の集客やDXについて考える際は、ポジショニングマップの作成をおすすめします。