スタッフ全員が質の高い接客を行えるようにするためには、接客マニュアル動画を活用するのが効果的です。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
飲食店で接客マニュアル動画を活用すると、スタッフ全員の接客の質が向上する可能性があります。
そこで今回は、接客マニュアル動画を制作するメリットや作り方、作る際のポイントをご紹介するので、接客の質向上に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
接客マニュアル動画を制作するメリット
接客マニュアル動画を制作するメリットは4つあります。
教育コストの削減、教育の質の均一化、見直し・改善の容易化、そして顧客満足度向上です。
各メリットを解説していきます。
教育コストの削減になる
飲食店のスタッフ教育はOJT(実地訓練)が基本です。
つまり、飲食店の経営者や店長、あるいはベテランスタッフの貴重な時間を割くことになります。
接客マニュアル動画を活用すると接客のベースを作った上でOJTを実施できるため、より少ない時間で接客指導が行えます。
経営者や店長、ベテランスタッフなどの人材が本業に集中できる時間を増やすことで、相対的に教育コストの削減になります。
教育の質を均一化できる
教育を担当するスタッフがコロコロと変わってしまうと、当然ながら教育の質にムラができてしまいます。
教育に慣れたスタッフが毎回担当するのが理想的ですが、必ずしも理想通りにいかないのが現実です。
そこで、接客の上手いスタッフを参考にしながら接客マニュアル動画を制作・活用すれば、一定レベルまでは教育の質を均一化できるようになります。
新人スタッフにとってストレスとなる「人によって言うことが変わる」という状況も防げるため、教育の質の向上も図れます。
見直し・改善が容易になる
接客マニュアル動画を活用している飲食店では、日頃の接客において動画は1つの指標になります。
そのため、スタッフ個人や飲食店全体の接客の乱れなどを判断しやすくなる上に、動画という指標があるため見直し・改善が容易になります。
また、接客マニュアル動画を定期的に見直し、必要に応じて改善を加えることで接客をアップデートできるというメリットもあります。
顧客満足度向上につながる
接客マニュアル動画を活用してスタッフ全体の接客の質が向上すれば、最終的には顧客満足度向上につながります。
顧客満足度の向上は、新規のお客さまをリピーター化する上でとても重要な施策です。
料理の味やお店の内装、衛生面などに加えて接客の質を向上すれば、顧客満足度向上につながるのは間違いありません。
接客マニュアル動画の作り方
それでは、接客マニュアル動画の作り方をご紹介します。
1~7までのステップがあるので少し面倒に感じるかもしれませんが、質の高い接客マニュアル動画を作るためにはいずれも欠かせないステップです。
1. 接客のコンセプトを考える
「良いお店なのに接客が勿体無い」と感じる飲食店の多くは、接客にコンセプトがありません。
例えばスターバックス・コーヒーでは「家庭でも職場でもない第3の空間を提供する」というコンセプトで経営が行われており、接客にも反映されています。
「接客を通じてお客様に何を提供したいのか?」というコンセプトを作ることで、飲食店の接客は劇的に変化します。
ちなみに私のお店では「〇〇(武野様のお店のコンセプトをご入力ください)」をコンセプトに接客を行っています。
接客のコンセプトをまだ持っていないという飲食店は、この機会に考えてみてください。
2. 接客シーンを想定する
続いて、接客シーンを想定しましょう。
飲食店ではホールスタッフが注文を取りに行ったり、料理を運んだりするだけでなくさまざまな接客シーンがあります。
お客さまに呼び止められたとき、料理について質問されたときなど、あらゆる接客シーンを想定することで接客マニュアル動画を網羅的に制作できるようになります。
また、ホールスタッフだけでなくキッチンスタッフが接客にあたる可能性なども想定しておきましょう。
3. 接客内容を細かく洗い出す
次に、想定した接客シーンごとに接客内容を細かく洗い出しましょう。
たとえば注文を取りに行くときの接客内容を、次のように洗い出してみます。
1 | お客さまがスタッフを呼ぶ(呼び出しベルを鳴らす) | ・「ただいまお伺いいたします」など返答をする・コロナ禍なので声は控えめに、しかし届くように |
2 | スタッフがテーブルに到着する | ・お客さまがすぐに注文内容を言うとは限らない・テーブルに到着する前から注文票や端末を手に持つと急かしてしまう可能性がある・「お待たせいたしました、お伺いいたします」などまずは挨拶を・お客さまが注文するようならそこで初めて注文票や端末を手に持つ |
3 | お客さまが注文内容を伝える | ・お客さまの言葉に自分の言葉をかぶせない・注文ごとに「はい」と返答するか注文内容を繰り返す・注文内容を繰り返す際は正式名称でなくて構わない |
4 | スタッフが注文内容を確認する | ・基本的にはお客さまが注文した順番で内容を確認する |
5 | スタッフがテーブルを離れる | ・「ご注文ありがとうございます。それではご用意致しますので、今しばらくお待ちください」など一言添えてからテーブルを離れる |
このように接客内容を細かく洗い出すことで、接客シーンごとのポイントも洗い出せるようになります。
余談ですが「注文内容を繰り返す際は正式名称でなくて構わない」というのは、私が重要に感じているポイントです。
たとえばスターバックスコーヒーでクリームなどを多めに頼みたいとき、「エクストラで」と言うお客さまもいれば「多めで」と言うお客さまもいます。
私はあるとき、意図的に言い方を変えて注文内容を伝えたことがあるのですが、その際のスタッフは私が「エクストラで」と言えばエクストラ、「多めで」と言えば多めと同じように復唱してくれました。
非常に細かいポイントかもしれませんがその際のスタッフの対応に感動し、今では私のお店でもこのポイントを徹底しています。
4. 接客に必要な商品知識を整理する
続いて、接客に必要な商品知識を整理していきましょう。
料理の説明だけでなく、そこに使われている食材の知識まで吸収できるとお客さまに質問された際にスムーズに対応できます。
ホールスタッフが食材に関する質問まで回答できると、非常にホスピタリティの高い飲食店という印象を受けます。
ただし、スタッフにここまでの対応を求める場合は賃金とのバランスを考慮してください。
スタッフの賃金に対して求めることが大きくなると、スタッフのモチベーション低下の原因になってしまいます。
5. 対応方法のレギュレーションを作る
続いて、想定される接客シーンごとに対応方法のレギュレーションを作りましょう。
「お客さまがこのように質問したら、このように返答する」など、対応方法のレギュレーションを作っておくと接客マニュアル動画作りを行いやすくなります。
6. 言葉遣いのレギュレーションを作る
スタッフの言葉遣いに関するレギュレーションも欠かせません。
たとえば次のような言葉遣いは、意識して変えることで接客の質がグンと向上します。
- ご注文のお料理の“ほう”、お持ちいたしました
- こちら〇〇に“なります”
- 〇〇円“から”お預かりいたします
いずれも日本語として誤用であり、正しく用いるとすっきりとした言葉遣いに変わります。
- ご注文のお料理をお持ちいたしました
- こちら〇〇でございます
- 〇〇円、お預かりいたします
専門家によっては「誤用ではない」という意見もありますが、こうした言葉遣いは気になるお客さまが意外と多いので、レギュレーションを作り、できる限り正しく用いることをおすすめします。
7. 必要な接客マニュアルを整理する
ここまでのステップを踏まえて、必要な接客マニュアルを整理しましょう。
さらに、制作の優先順位をつけていきます。
全ての接客マニュアル動画を制作し終えるまでには相当の時間がかかるため、優先順位をつけ、優先度の高いものから制作していきます。
制作した動画は素早く公開し、新人スタッフだけでなく全てのスタッフが視聴できる状態にすることで、接客の質向上に貢献できるでしょう。
接客マニュアル動画を作るポイント
それでは最後に、接客マニュアル動画を作る上で意識したい4つのポイントをご紹介します。
ポイント1. 動画は1つあたり3分程度の短尺で作る
接客マニュアル動画は集中して視聴されてこそ意味があります。
そのため、動画1つあたりの時間は3分程度の短尺で作るのがおすすめです。
最近はショート動画が流行しており、長い動画よりも短い動画の方がストレスなく視聴できる傾向が高まっているため、長くても5分程度にとどめておきましょう。
ポイント2. 視聴者に語りかけるような動画を作る
動画は視聴者に語りかけるように制作し、視聴者が自分ごととして考えられるようにしましょう。
よくある接客シーンを撮影するだけでなく、語りかけるような動画として制作すると視聴者の意識に残りやすい動画になります。
ポイント3. 伝えたい内容を最初の話しておく
冒頭にて、その動画で伝えたい内容を話しておくのも効果的です。
「これから何を教えられるのか?」を知らない状態で視聴するのと、知っている状態で視聴するのとでは後者の方が学習効率が良くなります。
また、接客マニュアル動画が多数ある場合は、視聴者のちょっとしたストレスの軽減が学習意欲の維持につながります。
ポイント4. 講演者はしっかりとカメラを見据える
動画で接客について教える講演者は、しっかりとカメラを見据えて話すようにしましょう。
恥ずかしさからカメラから目線をチラチラと外してしまうと、視聴者は動画そのものに集中しづらくなります。
どうしても目線を外してしまうという講演者は練習した上で本番撮影に臨んでください。
接客マニュアル動画でスタッフ教育を効率化しましょう
OJTなどで接客指導はしていても、接客マニュアル動画を用いている飲食店は多くありません。
制作に手間や時間はかかりますが、1度制作した接客マニュアル動画は長期間にわたって欠かせないコンテンツになります。
接客指導にかかる時間やコストを考えると接客マニュアル動画の方が低コストかつ効率的に教育できるため、この機会に接客マニュアル動画の制作をぜひご検討ください。