あなたが経営する飲食店では、ターゲットとなるお客さまについて明確に説明することができますか?
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、飲食店のDX実現や集客施策に欠かせない「ペルソナ」というフレームワークをご紹介します。ペルソナを活用すれば、ターゲットとなるお客さまが明確になり、具体性のある戦略を立案できるようになります。テンプレートもご用意しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ペルソナとは?
ペルソナ(persona)はイタリア語やスペイン語など、ラテン語を起源とするロマンス語で使われる言葉です。日本語では「人、人格」と訳されます。フレームワークにおけるペルソナは、「お客さまとなるターゲットを詳しく再現した情報」という意味で使われています。
言い換えると、「理想のお客さまを表す架空の人物像」です。
それってターゲットと同じ意味では?と思われるかもしれませんが、ペルソナとターゲットには明確な違いがあります。
ペルソナとターゲットの違い
ターゲットとは、「ビジネスの対象となる実在の集団」を意味します。
例えば「20代、独身の男性・女性」など実在する集団についてざっくりと表したものがターゲットです。
一方、ペルソナは飲食店が理想とするお客さま像を作り上げるので、かなり細かい情報まで設定します。
例えば「20代、独身の男性、社交的で同僚からの信頼が厚い、趣味や1人キャンプ」といった具合に、こと細かくお客さま像を作り上げます。
では、なぜターゲットではなくペルソナが必要なのか?その理由は後ほどご紹介します。
ペルソナの主な設定項目
ペルソナを作る際は、一般的に2つの視点から情報をまとめていきます。
お客さまを客観的に見た情報である「デモグラフィック(人口統計学的変数)・ジオグラフィック(地理的変数)」と、お客さまの内面を表す情報である「サイコグラフィック(心理学的属性)・ビヘイアビル(行動変数)」です。
それぞれどのような情報をまとめていくのか詳しくご紹介します。
デモグラフィック・ジオグラフィック
- 氏名
- 性別
- 年齢
- 住所
- 学歴
- 職業
- 役職
- 収入
- 家族構成
- 親との同居
- 食費の平均
- 月々の小遣い
- 情報収集源
- 所有しているスマホ
- 所有しているPC
- 直近3ヶ月の健康状態
- お客さまの容姿(画像)
デモグラフィック・ジオグラフィックでは「客観的に見てお客さまはどのような人物か?」という情報を整理します。
ペルソナでは氏名や学歴など細かいところまで設定するのがポイントです。
氏名を決める際は、できる限り身近にいる人の氏名を使うのはやめましょう。
知人に類似する部分が多いと、どうしてもイメージがその人に引っ張られてしまいます。ペルソナの作成・活用では固定概念を持たないことが重要です。
サイコグラフィック・ビヘイアビル
- 趣味
- 最近の関心ごと
- 毎日の習慣
- 好きな食品
- 好きな飲料
- お酒の飲み方
- 飲食店に求めること
- 外食頻度
- 平日の過ごし方
- 休日の過ごし方
- ファッション
- 好きなブランド
- 価値を感じるモノ・コト
- 好きなSNS
- SNSの用途
- 好きなメディア
- 移動手段(ビジネス)
- 移動手段(プライベート)
- 友人関係
サイコグラフィック・ビヘイアビルでは「お客さまはどんな性格をしているか?」という情報をまとめます。この情報は、お客さまが飲食店を決める基準を形作っている部分です。
そのため、ペルソナの作成・活用ではデモグラフィックよりもサイコグラフィックの方が重要となります。
この他にもさまざまな情報項目が考えられますが、飲食店に関係するような情報項目は網羅するよう意識しましょう。
ペルソナの作成イメージ
先ほどの情報項目をもとに作成したサンプルがこちらです。
ペルソナテンプレートはこちらから
これは、私が経営する飲食店で実際に使用しているペルソナと同じサンプルです。ペルソナがあるおかげでDXや集客、メニュー開発などで一貫性のある施策を実施できるようになりました。
DXにペルソナが欠かせない理由とは
「ペルソナのおかげで一貫性のある施策を実施できるようになった」とご説明したように、ペルソナのメリットを表すキーワード は “一貫性” です。
この一貫性こそ、DXにペルソナが欠かせない理由となります。それでは、詳しくご紹介します。
顧客起点のビジネスを実現するため
飲食店経営に限らず、誰もが「顧客起点のビジネス」を重視しています。
しかし、多くの飲食店ではこの顧客起点を実現できていません。
飲食店側の都合に合わせた考え方を捨てるのは、なかなか大変なことなのです。
そこで、ペルソナという指針を1つ作ります。
飲食店のメニューやサービスなど、経営の全てをペルソナを基準に回り出すため、「顧客起点のビジネス」を限りなく実現できるようになります。
無駄なDX戦略に投資をしないため
多くの飲食店は、DXや集客に投入できる資金が限られています。
飲食店ごとに必要なDX戦略を取捨選択し、推進しなければ無駄な投資を増やすことになるでしょう。これは飲食店のDX実現で絶対に避けたい事態です。
飲食店のDXはより良いビジネスのためですが、これはお客さまのためにもなります。
つまり「お客さまのため」から逆算するようにDX戦略を推進すれば、飲食店に合ったDX戦略を考えられるようになります。
そのためにもペルソナを作り、活用し、お客さまのためになるDX戦略を考えなければいけません。
スタッフ全体で同じDX戦略を持つため
DXに対する認識がスタッフごとにバラバラでは、DX戦略の実施スピードが遅くなるどころか、なかなか成果が出ずにもどかしさを抱えることになります。
一方、ペルソナを作っている飲食店ではスタッフ全体が同じ方向を見ながらDXへ取り組めます。DX戦略の実施スピードが加速し、成果もしっかり出るのでDXの継続にも意欲が湧くでしょう。
ペルソナを作るステップ
それでは、実際にペルソナを作るステップをご紹介します。
ステップ1. お客さまにアンケートを取る
ペルソナは飲食店にとって理想のお客さま像を作るフレームワークですが、「現実とのギャップが少ないこと」が重要です。
せっかく作ったペルソナも現実とのギャップが大きいと、実態と合わないDX戦略や集客が生まれてしまいます。
そこで、まずはお客さまアンケートを取りましょう。アンケートの経験がない方には難しく感じるかもしれませんが、実はとても簡単な補法でお客さまからアンケートを収集できます。
私のお店ではTypeformというツールを利用して、4つのポイントを意識するだけで月1,000人のお客さま情報を収集できました。
飲食店経営!1ヶ月で1000人のリストを実店舗で集めた4つのポイント
記事を読みたい方はこちら→1ヶ月で1000人の顧客情報を取得できたデジタルツールとは?
再現性の高いやり方なので、ぜひ実践してみてください。
ステップ2. 収集した情報を整理する
次に、アンケートで収集したお客さまの情報を整理します。おすすめは「グルーピング」という方法です。
例えば「外食の頻度」という項目に対する回答でお客さま情報を分類します。
すると、飲食店利用者の傾向として「月に3~5回外食するお客さまが多い」という発見ができました。
このように情報項目ごとにお客さまをグルーピングすることで、飲食店をよく利用してくれるお客さまの傾向を把握できます。
さまざまな角度でグルーピングすると新しい発見があり、それだけでも楽しく作業できます。
ステップ3. ペルソナとなる人物像を作る
いよいよ、ペルソナとなるお客さまの人物像を作り上げていきます。
アンケートで収集したお客さま情報と、グルーピングした情報を合わせながら理想的なお客さま像を作ってみましょう。
ペルソ作りで注意すべきポイントは後ほどご紹介します
完成したペルソナのイメージ
こちらが3ステップで作成したペルソナのイメージです。
このペルソナは、私のお店で実際に使用しているものです。
かなり細かい部分まで設定していますが、アンケート情報に基づき「現実とのギャップ」を極力排除しながら設定したため、細かすぎるということはありません。
実際にご来店くださるお客さまを見てみると、ペルソナにマッチしているであろうお客さまが多くいらっしゃっています。
飲食店はお客さまと直接対面するビジネスなので、ペルソナと現実にギャップを発見した際もすぐに修正できるため、質の高いペルソナを作りやすいのが特徴です。
ペルソナ作りで注意すべき3つのポイント
それでは最後に、ペルソナ作りで注意していただきたいポイントを3つご紹介します。
注意1. 想像だけでペルソナを作らない
The「こんなお客さまに来店してほしいな」と想像を膨らませれば、今すぐにでもペルソナを作れます。
しかし想像はあくまで想像であり、現実とのギャップが大きく開いてしまう原因になるので注意しましょう。
理想はお客さまアンケートを実施することですが、難しい場合は「ご贔屓にしてくれているお客さまへのインタビュー」でも問題ありません。
もちろん、インタビューにご対応いただいたお客さまにはお礼のサービスを忘れないでください。
注意2. ペルソナ作りにこだわり過ぎない
ペルソナは細部まで作り込むフレームワークですが、こだわり過ぎて時間がかかってしまうのは良くありません。
また、お客さまアンケートを取る理由はペルソナだけではないので、やはりペルソナ作りにこだわり過ぎないことが大切です。
ペルソナ作りに必要な情報が揃ったら、まずはササッと作ってみましょう。
実は最初に作ったペルソナが正解とは限らず、定期的な見直しが必要なためこだわり過ぎるのは時間を浪費することになります。
注意3. 作ったペルソナは定期的に見直す
作ったペルソナは定期的に見直し、適宜修正を行いましょう。
ペルソナは現実とのギャップを埋めることが大切であり、1度の作業で質の高いペルソナを作るのは困難です。
まずは作ったペルソナでDX戦略や集客施策を考え、実施し、現実とギャップがあると感じた場合は修正していきます。
ペルソナの質が高まると見直しのスパンが1ヶ月・3ヶ月・半年と伸びていき、作業負担が軽くなるので安心してください。
DXや顧客起点のビジネスのためにペルソナを活用しましょう
今回は、飲食店のDX戦略や集客のためのペルソナについてご紹介しました。飲食店の規模に関わらず、ペルソナは有効なフレームワークです。
これからの時代、感覚に頼った経営では競合店にお客さまが流れてしまう可能性があります。自店にとって大切なお客さまを見極め、顧客起点のビジネスを実現するためにもペルソナをぜひ活用してみてください。