キャッシュレス決済を導入してない店舗の約24%が、その判断理由を「決済手数料が高いから」としています(経済産業省の発表資料より)。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
飲食店の中にもキャッシュレス手数料をまだ導入していない店舗は多いでしょう。
そこで今回は、飲食店がキャッシュレス決済をすぐ導入すべき理由と、おすすめのキャッシュレス決済、そしてキャッシュレス決済を比較・検討するポイントをご紹介します。
キャッシュレス決済の導入可否で悩んでいる飲食店経営者はぜひ参考にしてみてください。
飲食店がキャッシュレス決済をすぐ導入すべき5つの理由
飲食店がキャッシュレス決済をすぐにでも導入すべき理由は5つあります。
全ての理由を総合して考えると、キャッシュレス決済にかかる手数料以上の費用対効果が得られるので、ぜひご注目ください。
理由その1. 現金管理はヒューマンエラーがつきもの
現金管理を行なっていると、必ずといってよいほど帳簿と現金が合わなくなります。
なぜなら、現金管理には手作業の介入が多く、ヒューマンエラーが発生しやすいからです。
その日の売上集計でゼロを1つ多く入力(記入)してしまうだけでも、月末の帳簿照会で現金が合わなくなり、遡って計算しなければいけず大きな手戻りになってしまいます。
ここで注意していただきたいのは、「経営者にも人件費がかかっている」ということです。
帳簿紹介を行うのが経営者自身の場合、自分の人件費を考えずにいくら手間がかかってもよいものと錯覚しがちです。
しかし、経営者にも人件費はしっかりとかかっているので、帳簿紹介時に手戻りが発生すると作業時間の分だけ人件費が発生します。
この余計な人件費がキャッシュレス決済の手数料を越えることは往々にしてあることです。
したがって、キャッシュレス決済を導入して現金管理の手間を少なくする方が、結果として低コストで経営できる可能性があります。
理由その2. 現金管理にもコストはかかっている
たとえ手戻りが発生しなくても、現金管理そのものにもコストが掛かっていることも忘れないでください。
毎日の売上集計、定期的な帳簿照会、夜間金庫への入金、それらの作業にはすべて人件費がかかっています。
キャッシュレス決済によって現金管理にかかる作業時間が少なくなれば、その分だけコストは減ります。
理由その3. 現金の両替に手数料がかかるようになった
近年、銀行各社において現金の両替に手数料がかかるようになりました。
メガバンクの両替手数料は次のようになっています。
窓口で両替する場合
取扱枚数 | 三井住友銀行 | みずほ銀行 | 三菱UFJ銀行 |
---|---|---|---|
1~10枚 | 330円(口座所有者は220円) | 550円(口座所有者は1日1回無料) | 550円(口座所有者は1日1回無料) |
11~500枚 | 770円 | 550円 | 550円 |
501枚以上 | 1,540円(1,000枚を超える場合は500枚ごとに770円) | 1,320円(以降、500枚ごとに660円) | 500枚ごとに550円を加算 |
両替機を使用する場合
取扱枚数 | 三井住友銀行 | みずほ銀行 | 三菱UFJ銀行 |
---|---|---|---|
1~10枚 | 400円(口座所有者は1日1回無料) | 300円(1回目無料) | 200円(1回目無料) |
11~500枚 | 400円 | 400円 | 300円 |
501~1,000枚 | 800円 | 800円 | 600円 |
キャッシュレス決済を導入しても両替が不要になるわけではありませんが、必要性が下がれば両替にかかる手数料も抑えられます。
理由その4. キャッシュレス決済は賢く選べば手数料を抑えられる
キャッシュレス決済といえば以前はクレジットカード一択でしたが、最近では電子マネーやデビットカードなど、さまざまな決済方法が利用されています。
そのため、キャッシュレス決済は賢く選べば手数料を抑えることが可能です。
導入するキャッシュレス決済によっては、手数料が2%を切る場合もあります。
たとえば5,200万人のユーザー数を誇るPayPayの決済手数料は通常1.98%です。
月額1,980円(1店舗あたり)の「PayPayマイストア ライトプラン」を契約すれば、決済手数料は1.60%になります。
飲食店によってはPayPayの決済比率が20%近くなるケースもあるので、キャッシュレス決済は賢く選べば手数料を大幅に抑えられます。
理由その5. キャッシュレス決済非対応の機会損失は大きい
キャッシュレス決済システムのSquareが行った調査によると、調査対象となった消費者1,464人のうち、約23%の人が「クレジットカードが使えなかったため、購入を諦めたことがある」と回答しています。
お客さまが100人いれば、そのうち23人がキャッシュレス決済に対応していなかったことで入店を諦めているのです。
飲食店にとってこれは非常に大きな機会損失になるため、これまでキャッシュレス決済に対応してこなかった飲食店は、対応可否を早急に検討すべきだと言えるでしょう。
飲食店におすすめのキャッシュレス決済3選
それでは、飲食店におすすめのキャッシュレス決済3選をご紹介します。
1. PayPay(ペイペイ)
PayPayは決済手数料の安さ(1.6% or 1.98%)、そしてユーザー数の多さから積極的に検討・導入すべきキャッシュレス決済です。
5,200万人というのは、クレジットカードを除くキャッシュレス決済として圧倒的なユーザー数です。
現金払いのみからPayPay導入に踏み切った飲食店経営者から話を聞くと、「PayPay使えますか?と1日に1回は聞かれるから」と答える方も少なくありません。
また、PayPayは企画力が高く、ユーザーが楽しみながらキャッシュレス決済を利用できるキャンペーンを定期的に実施しています。
飲食店としてはその企画力を利用し、PayPay払いのお客さまを確実に取りこぼさないようにしたいところです。
2. クレジットカード
クレジットカードはキャッシュレス決済の中で最も利用率が高く、2021年には決済比率の27.7%を占めています(経済産業省の発表資料より)。
クレジットカードの決済手数料は3.24~3.9%程度と高めですが、それを補っても余るほどの集客力を持ちます。
先ほどご紹介したSquareの調査の通り、「クレジットカードが使えなかったため、購入を諦めたことがある」と回答した人は約23%です。
決済手数料はかかってもその分多くのお客さまに来店していただくきっかけになるので、PayPayの次に検討すべきキャッシュレス決済と言えます。
また、おすすめのクレジットカードブランドはVisaとMastercardです。
Visaは世界で最も利用者数の多いカードブランドであり、Mastercardは2番目にシェア率が高いカードブランドです。
中国人観光客の多い地域では、中国本土で発行枚数60億枚以上を記録している銀聯(Union Pay)の導入はマストでしょう。
3. デビットカード
近年じわじわと利用者数が伸びているのはデビットカードです。
デビットカードは決済と同時に連携した銀行口座からお支払い料金が引き落とされる仕組みになっており、「使い過ぎる心配がない」と人気を集めています。
2021年の決済比率では0.92%を占め、電子マネーやコード決済に迫る勢いです(経済産業省の発表資料より)。
デビットカードの決済手数料はクレジットカードと同程度ですが、「即時入金される」という点で大きな違いがあります。
クレジットカード決済は入金サイクルが決まっていますが、デビットカード決済の売上金は数日後に入金されます。
キャッシュフローを早めたい飲食店にとって、デビットカードは有用な選択肢になるでしょう。
飲食店がキャッシュレス決済を比較・選定するポイント
それでは最後に、飲食店がキャッシュレス決済を比較・選定するポイントを3つご紹介します。
キャッシュレス決済のタイプを知る
キャッシュレス決済にはいくつかのタイプがあり、それによって導入方法や決済手数料の相場などが異なります。
種類 | 詳細 |
クレジットカード | 飲食店などの決済だけでなく公共料金の支払いにも利用でき、保有率・利用率が最も高いキャッシュレス決済。 |
デビットカード | 決済すると連携した銀行口座から支払い代金が即座に引き落とされるため、使い過ぎを防止できる。 |
プリペイドカード | プリペイドカードに事前入金した金額分の決済が行える。 |
電子マネー (カード決済) |
専用機器に電子マネー対応のカードをかざすと決済できる、非接触型のキャッシュレス決済。交通系ICカードなどもある。 |
電子マネー (デバイス決済) |
専用機器に電子マネー対応のスマートフォンやスマートデバイスをかざすと決済できる、非接触型のキャッシュレス決済。 |
コード決済 | スマートフォンにインストールしたアプリを利用し、バーコードやQRコードの読み取りによって決済できる非接触型のキャッシュレス決済。 |
キャリア決済 | NTTドコモ、au、ソフトバンクの電話料金や通信料金とまとめて支払いできるキャッシュレス決済。 |
自店舗のターゲットを想定する
次に、自店舗におけるターゲットを想定してみてください。
同じキャッシュレス決済でもタイプごとに特徴があり、ターゲットによって利用するキャッシュレス決済の傾向も異なります。
たとえば「ビジネスパーソンの多い店舗ではクレジットカード」、「主婦層の多い店舗ではポイントが溜まりやすい電子マネー」といった具合に、ターゲットによって導入すべきキャッシュレス決済のタイプを検討しましょう。
利用率の高いキャッシュレス決済を選ぶ
最終的には、検討した中で利用率の高いキャッシュレス決済を選びましょう。
同じタイプの中でもサービスによって利用率は異なり、極力利用率の高いキャッシュレス決済を選ぶことでより多くのお客さまにご来店いただける可能性が高くなります。
前述のようにクレジットカードならVisaやMastercardがおすすめです。
あるいは、外国人観光客のインバウンド需要が見込めないような飲食店なら、日本でのシェア率が2番目に高いJCBを導入するのも良いでしょう。
キャッシュレス決済対応で取りこぼしをなくしましょう
キャッシュレス決済に対応すれば、これまで取りこぼしていたお客さまを確実にすくい上げられるようになります。
また、現金管理には想定以上のコストがかかっているため、これまで現金払いのみだった飲食店でも、この機会にキャッシュレス決済導入をご検討ください。