自店がお客さまからなぜ選ばれるのか?あるいは、なぜ選ばれないのか?その理由を知ると、飲食店のDX(デジタルトランス・フォーメーション)や集客は、より良い方向へと向かわせることができます。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、飲食店の強みや弱み、そのほかの要素を把握できるSWOT分析についてご紹介します。簡単に実施できるようテンプレートもご用意したので、ぜひ参考にしてみてください。
SWOT分析とは?
SWTO分析とは4つの言葉の頭文字を取っています。
- 強み:Strength
- 弱み:Weakness
- 機会:Opportunity
- 脅威:Threat
強みと弱みは内部環境であり、機会と脅威は外部環境です。内部と外部、2つの環境に分けて各要素の情報を整理することで、飲食店のDX実現や集客の最適化に向けた戦略を、具体的に考えられるようになります。
では、SWOT分析が実際にどういうものかを見ていただきましょう。
縦軸に内部環境と外部環境、横軸にプラス要因とマイナス要因を置き、それぞれがクロスしたところに対応する要素を書き込んでいきます。この段階では単なる情報整理にすぎないため、クロスSWOTを用いて具体的な戦略へと落とし込んでいきます。
クロスSWOTとの違い
クロスSWOTとは、SWOT分析において整理した情報をさらに統合し、具体的な戦略を考えるためのフレームワークです。SWOT分析で整理した情報は次のようにクロスさせることで、新しい気づきを与えてくれます。
強み×機会:プラス要因を最大限に活かした戦略
強み×脅威:自社の強みを活かして脅威を乗り切る戦略
弱み×機会:機会を活かすために弱みを改善する戦略
弱み×脅威:マイナス要因を理解しリスクを回避する戦略
詳しいやり方は後ほどご紹介します。
飲食店がSWOT分析に取り組むメリット
飲食店がSWOT分析に取り組むメリットは、「強みと弱みの把握」「クロスSWOT分析の実施」「リスクの回避」の3つです。各メリットについて詳しく解説していきます。
飲食店の強みと弱みを把握できる
飲食店における強みと弱みを改めて整理できるのはS SWOT分析の基本的なメリットです。
飲食店DXや集客を成功させるには、自店がお客さまになぜ選ばれるのか?なぜ選ばれないのか?を明確にする必要があります。しかし、多くの飲食店ではこれらを感覚的に理解しているだけで、明確に把握していません。
SWOT分析を用いて飲食店の強みと弱みを把握し、効果が高く、かつ効率的な施策を展開できるようにしましょう。
クロスSWOTで具体的な戦略に落とし込める
SWOT分析を行っただけでは単なる情報整理です。整理した情報をクロスSWOTで具体的な戦略に落とし込めることが、最大のメリットかもしれません。
先ほどご紹介したように、クロスSWOTでは各要素を統合した4つの組み合わせから戦略を考えていきます。
これがシンプルかつわかりやすいということで、分析に慣れていない飲食店経営社も気軽に取り組めるというメリットもあります。
リスクを回避しながらビジネスチャンスを作れる
常にリスクを回避し、ビジネスチャンスを作る。飲食店だけでなく全ての経営者にとって理想の形ですね。SWOT分析はこの理想をかなえる要になります。
飲食店にとっての脅威は日常的に存在します。コロナ禍で全ての経営者が痛感したことでしょう。一方で、ビジネスチャンスも必ずどこかに隠れています。ホスピタリティの向上などにより、コロナ禍で逆に業績を伸ばした飲食店もあるのです。
SWOT分析を定期的に実施することで、リスクとビジネスチャンスの両方を把握し、それらを活かした経営戦略をとることができます。
合わせて知っておきたいSWOT分析の注意点
SWOT分析にはいくつか注意点もあるため、やり方をご紹介する前にここで注意喚起しておきます。
目的を初めに決めておく
SWOT分析に限らず、フレームワークを利用する場合は初めに目的を設定することが大切です。例えばビジネスチャンスの把握を優先するか、リスクの把握を優先するかによって取り組み方が変わります。「何のためにSWOT分析を行うのか?」まずはこの目的を明確にしましょう。
内部環境と外部環境を混同しない
内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)は混同しがちなので注意してください。
内部環境は主体的にコントロールできる特性があり、外部環境はコントロールできない特性があります。例えば「低価格のご提供」というのは一見するとコントロール可能です。しかし、多店舗の提供価格によって相対的に低価格とは呼べない可能性もあります。
「低価格のご提供」という表面上の情報だけでは、内部環境か外部環境かの判断は難しいところです。これが「契約農家からの直接仕入れで品質に対して低価格で提供できる」など、具体的な情報として整理できれば、内部環境であると判断できます。
内部環境と外部環境の混同はSWOT分析を間違った方向へ進めてしまう可能性があるので注意しましょう。
SWOT分析のやり方
それではSWOT分析のやり方をご紹介します。大きく分けると5つのステップで完了し、多くの時間は取られないのでぜひ実施してみてください。
1. 内部環境と外部環境を整理する
まずはMECE(ミーシー)を意識しながら内部環境と外部環境を整理します。MECEとは「ダブりがなく、漏れもない状態(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)ミューチュアリー・エクスクルーシブ・コレクティブリー・エグゾースティブ)」です。
これを意識しながら内部環境である強みと弱み、外部環境である機会と脅威を整理していきましょう。先ほど注意喚起した「内部環境と外部環境を混同しない」も意識してください。
できる限り具体的な言葉でそれぞれの要素を表すことで、MECEと非混同を意識した情報整理が行えます。
2. プラス要因とマイナス要因に分ける
次に、整理した情報をプラス要因とマイナス要因に分けていきましょう。プラス要因とマイナス要因も混同する可能性があるので注意してください。
例えば「他店舗よりもとにかく低価格で提供する」は一見するとプラス要因ですが、付加価値を提供できず提供価格を外部環境に依存していることになるためマイナス要因とも考えられます。
整理した情報がプラス要因なのかマイナス要因なのかを慎重に見極めましょう。
3. SWOT分析のマトリクス(表)に書き込む
内部環境と外部環境、プラス要因とマイナス要因の整理が終わったSWOT分析のマトリクスに情報を書き込んでいきます。エクセルを使えば簡単に作成できますが、よろしければ私がご用意したテンプレートをご活用ください。
SWOT分析のスプレッドシートテンプレートをダウンロードする
4. クロスSWOTで課題・戦略を考える
続けてクロスSWOTを実施します。先ほどご紹介した4つの組み合わせをおさらいしましょう。
強み×機会:プラス要因を最大限に活かした戦略
強み×脅威:自社の強みを活かして脅威を乗り切る戦略
弱み×機会:機会を活かすために弱みを改善する戦略
弱み×脅威:マイナス要因を理解しリスクを回避する戦略
上記4つの組み合わせをもとに、私が実施したクロスSWOTがこちらです。
このクロスSWOTは、私が店舗の見直しの際に実際に作成したものですので、ぜひ参考にしてみてください。
5. 課題・戦略に優先順位をつける
SWOT分析とクロスSWOTを通じて、さまざまな課題・戦略を発見できたかと思います。最後に、それらの課題・戦略に優先順位を付けましょう。
飲食店経営を行いながら全ての課題・戦略に取り組むには時間が足りません。そのため、重要度の高い課題・戦略から取り組むことが、DX実現や集客を効率よく成功させるポイントになります。
優先順位を決める基準は、「早期的な施策効果に期待できるか否か」です。中長期的な施策にいきなり取り組んでしまうと、挫折する可能性が高くなります。まずは早期的な施策効果に期待が持てるかどうかで、課題・戦略の優先順位をつけましょう。
DX推進の要になるSWOT分析を実施するには?
一番大切なことは「幅広いお客さま情報、販売情報を収集すること」です。SWOT分析の質は、情報の質によって決まります。
つまり、お客さま情報や販売情報を保有している飲食店の方が正確なSWOT分析を行え、DX推進の要になるフレームワークとして利用できます。
そのためにはタブレットレジの導入などデジタル化を検討し、さまざまな情報を収集できる体制を整えておきましょう。
SWOT分析/クロスSWOTで飲食店経営の課題・戦略を考えましょう
SWOT分析/クロスSWOTは、飲食店の課題・戦略を考える上で基本となるフレームワークです。シンプルなだけに奥が深く、やり方次第でDXや集客の方向性が変わります。
飲食店経営者がSWOT分析/クロスSWOTへ取り組む際は、今回ご紹介したポイントを参考にしながら、DX実現や集客成功につながるよう実施していきましょう。