飲食店がDXへ取り組むにあたって情報整理が欠かせません。しかし、勘や経験に頼った経営をしてきた飲食店経営者の中には、「情報やデータの整理が苦手」という方が多いのではないでしょうか。そんな方は、分析フレームワークを使うことで比較的簡単に情報整理が行えるようになります。
こんにちは。
武野 慎一郎です。
今回は、DX実現に欠かせない6つの基礎フレームワークをご紹介します。飲食店DXを戦略的に進めるために、ぜひ参考にしてみてください。
DXのフレームワークとは?
フレームワークとは、「特定の作業を効率よく実行するための雛形(ひながた)」のことです。経営やマーケティングの専門家たちが考案したフレームワークを使用すれば、分析が苦手な方でも簡単に情報整理を行えるようになります。
DXにおけるフレームワークとは、デジタル化に欠かせない情報を整理するためのものです。今回ご紹介する6つの基礎フレームワークを利用することで、DX実現のベースになる情報を整理することができます。
DX実現にフレームワークが欠かせない理由
では、DX実現にフレームワークがなぜ欠かせないのか?理由は3つあります。
- 戦略的かつ効率的にDXを推進するため
- 自店の強み・弱みなどを明確にするため
- お客さまの行動・感情を見える化するため
勘や経験を頼りに肌感覚で経営を行ってきた飲食店がDXを実現するためには、まず「現状の認識と現実のギャップ」を知る必要があります。
たとえば、「お客さまはなぜあなたのお店に来るのか?」という質問に対し、明確に答えることができるでしょうか。「味が良いから」「安いから」などの理由はパッと思いついても、さらに深いところにあるお客さまの感情まで明確にできている飲食店は少ないように思います。
こうした現状の認識と現実のギャップを知ることで、「DX実現のために何が必要なのか?」を考えやすくなります。これが、DXのフレームワークを使って情報整理をする目的です。
DX実現に欠かせない6つの基礎フレームワーク
それでは、DX実現に欠かせない6つの基礎フレームワークをご紹介します。ここでは各フレームワークの概要に触れ、細かいやり方は他の記事でご紹介しますので、あわせて参考にしてみてください。
1. SWOT分析/クロスSWOT
SWOT分析は店舗の強みと弱み、ビジネスの機会と脅威を整理するフレームワークです。
- Strengthens(強み)
- Weaknesses(弱み)
- Opportunities(機会)
- Threats(脅威)
それぞれの頭文字を取ってSWOT分析といいます。一般的には、横軸に強みと弱み、縦軸に機会と脅威を置いたマトリクスを用いて情報を整理します。
このように記入したSWOT分析を用いて、具体的な戦略に落とし込むためのフレームワークがクロスSWOTです。4つの軸で整理した情報を組み合わせることにより、優先的に取り組むべき戦略や、正しいリスクマネジメントの方法などを把握できます。
DXでは基本中の基本であり初心者でも取り組みやすいフレームワークなので、まずはSWOT分析/クロスSWOTから初めてみましょう。
2. ペルソナ
ペルソナとは飲食店にとって理想的なターゲットを描くフレームワークです。広告を出したりSNSを始めたり、集客に力を入れてもなかなか成果が出ないという飲食店では「正しいターゲットに情報が届いていない」可能性が考えられます。となると、まず取り組むべきはターゲットの明確化です。ここでペルソナが大いに役立ちます。
ペルソナは飲食店が理想とするターゲット像を細部まで細かく描いていきます。つまり、「こんなお客さまにうちの料理を食べてもらいたい!」というイメージを膨らませるのです。すると明確にしたターゲットを基準にした集客に取り組めるため、一貫性のある集客が生まれ、正しいターゲットに情報が届きやすくなります。
DXにおいては、常にお客さまを見据えて取り組みが欠かせないので、ペルソナを作るとDX活動全体の方針を固められるのが大きなメリットです。
3. ジャーニーマップ
ジャーニーマップは直訳すれば「旅の地図」ですね。何のための旅の地図かというと、「お客さまが飲食店の存在を認知してから来店に至るまでの地図」です。
私たち飲食店経営者がお客さまを初めて目にするのは、店舗に足を運んでくださった時です。しかしそこに至るまでには、私たちには見えないお客さまだけが知る行動履歴があります。そのジャーニーマップを見える化できれば、DX実現や集客を有利に運べると思いませんか?
実際、マーケティングの世界でジャーニーマップは欠かせないフレームワークです。お客さまの行動履歴を見える化できれば、タッチポイント(接点)の把握や、その都度正しいコミュニケーション手段の選択が行えるようになります。また、ジャーニーマップはペルソナと併用することで最大限の効果を発揮できます。
4. 5P分析
5P分析は飲食店のメニューやサービス、価格や流通などの情報を整理し、これからのDX戦略を考えるためのフレームワークです。
- Product(メニュー・サービス)
- Price(メニュー料金・客単価)
- Place(エリア・店舗・仕入れ)
- Promotion(集客・販売促進)
以上の、Pから始める4つの要素を基本として、「お客さまやスタッフ(People)」「業務プロセス(Processs)」といった5つ目の要素をプラスします。
これらを整理することで、SWOT分析/クロスSWOTで整理した情報を補強し、より具体的なDX戦略を考えていきます。
5. STP分析
STP分析はDX実現に向けて、飲食店の立ち位置を改めて理解するためのフレームワークです。
- Segmentation(市場を細分化する)
- Targeting(狙う市場を決める)
- Positioning(立ち位置を把握する)
それぞれの頭文字を取ってSTP分析といいます。STP分析は本来、新規ビジネスの戦略を考えるためのフレームワークですが、DXなど何か新しいことを始める際にも使えます。
STP分析を使って市場全体の情報、顧客やターゲットの情報、そして飲食店の立ち位置を把握することにより、肌感覚の経営では見えてこなかったことを明確にできます。
6. ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、STP分析の「Positioning(立ち位置を把握する)」を補足するためのフレームワークです。基本的には対峙する2つの要素を1つのセットとして、2セット用意します。縦軸と横軸にそれぞれの要素を置いたら、自店と競合店舗のマッピングを行います。
画像出典:Keywordmap ACADEMY
このようにポジショニングマップを作ることで、自店のポジションを見える化でき、経営の方向性について考えられるようになります。
DXフレームワーク活用時の注意点
DXフレームワークを活用する際に、注意していただきたい点が1つあります。それは「活用するフレームワークを最小限にとどめること」です。
今回ご紹介したフレームワークはあくまで現状整理を行うためのものであり、それ自体がDXではありません。フレームワークを活用した情報整理ばかりに時間をかけてしまうと、本来のDX活動に費やす時間が少なくなってしまいます。もっと最悪なのは、情報を整理しただけで満足してしまうことです。
私の経験上、フレームワークを活用する際はあれもこれも手を出すと失敗する可能性が高いので、今回ご紹介したフレームワークだけを使って情報整理することをおすすめします。
まずはDXフレームワークの概要をつかみましょう
今回は、DX実現に欠かせないフレームワークとその概要をご紹介しました。まずは各フレームワークの概要をつかみ、それぞれの役割を理解することが大切です。フレームワークごとの細かいやり方は他の記事でご紹介しているので、合わせて参考にしてみてください。