あなたは飲食店経営者として、「なぜ自分のお店が選ばれないのだろう」「どうすれば特定のターゲットに響くお店づくりができるのか」と悩んでいませんか?特に理想のお客様を惹きつけたいと考えているなら、お客様像を具体的に描き、細部までこだわった接客を実現することが解決の鍵です。ここでは理想のお客様を見つけ、その期待を超える方法を具体的にご紹介します。
飲食業界は競争が激しく、「なんとなく良いお店」から「わざわざ行きたいお店」へと進化することが求められています。特にお客様は細やかな配慮や心配りに敏感で、そこに応える価値提供ができれば強固なファン層を作ることができます。メニューブックの素材選びから、スタッフの接客スタイルまで、一貫性のある体験づくりが成功への道筋です。ここからは、完全予約制の古民家店舗を経営する実体験から、明日から始められる具体的なアクションプランまでをお伝えします。
理想のお客様像を明確にすることの重要性
あなたはお店に来店してくれるお客様を具体的にイメージできているでしょうか?理想のお客様像をどのように描き、その方々のニーズにどう応えていったのか、具体的にお話ししていきます。
理想のお客様を明確にすること。それは、大切なゲストを自宅に招くために、細やかな準備と心配りができるようになることです。
私が経営している完全予約制のお店の場合、オープン前から『40代女性』というターゲットを設定していました。しかし、単に年齢や性別だけを設定するのではなく、その方の生活スタイルや価値観まで、具体的にイメージを描いていきました。
ターゲットを40代女性に絞った具体的な理由
まず、その方の生活スタイルです。私の店舗は岡山県倉敷市にあります。なので倉敷や岡山で暮らす、夫婦または家族のいる40代の女性がターゲットです。教養があり、和の文化や食事にこだわりを持っている。友人とのランチや家族との特別な日のディナーに、居心地の良い上質な空間を求めている。
インスタグラムなどSNSで情報収集をする習慣があり、お店選びは口コミを重視する。一回の食事に3,000円〜5,000円程度を心地よく使える方ということを考えました。
さらに、その方の価値観も具体的に描きました。ただ食事をするだけでなく、築150年の古民家での食事体験を楽しみたい。非日常空間を体験したい、地元の食材や季節の食材を大切にする。
家族や友人との大切な時間に、きちんとした空間でゆっくりと食事を楽しみたいと考えている。このように細かく設定をしていきました。
細部へのこだわりが生む特別な体験提供
理想のお客様像が明確になったことで、私たちはあらゆる接点での細部にまでこだわりました。特に注力したのが、お客様との最初の接点となるメニューブックです。
ランチタイムのメニューブックには白木の表紙を採用しました。これは、明るい陽射しの中で清々しい和の趣を感じていただくためです。一方、ディナータイムは高級感のある皮の表紙に変更。夜の落ち着いた雰囲気に寄り添う素材を選びました。
さらにドリンクメニューは、地元倉敷の誇りであるジーンズ生地を表紙に採用。それぞれの時間帯に合わせた色調で仕上げることで、地域性とともに、その時間ならではの特別感を演出しています。
一見些細な違いに思えるかもしれません。「そんなことまでこだわるんですか?」と思われるかもしれません。しかし、私達のターゲットとしているお客様は、こういった細やかな心配りに敏感に反応してくださいます。私達のターゲットに合わせた結果、メニューの素材にこだわるという結論に行き着きました。
武野屋ハウスルール:心のこもった接客の基盤
お客様との接点の質を高めるため、私たちは『武野屋ハウスルール』という独自の接遇基準を設けました。「武野屋」というのは私たちのレストランの名前です。これは単なるマニュアルではありません。武野屋の価値観とおもてなしの本質を体現するための指針です。
新人教育では、このハウスルールの共有から始めます。なぜその応対が必要なのか、どのような価値観に基づいているのか。背景にある考え方まで理解することで、形式的な接客ではない、心のこもったサービスを実現できると考えたからです。
接客においても、従来の飲食店の常識を見直しました。一般的な接客用語ではなく、より品格のある接遇用語を採用。『いらっしゃいませ』という決まり文句での出迎えではなく、一人一人のお客様に合わせた自然な挨拶でお迎えすることを徹底しています。例で言うとひとつ目の項目として「こんにちは、ようこそお越し下さいました」というお出迎えをします。さらに会釈と中間礼二つのお辞儀の仕方を使い分け接客するようにしています。このように挨拶ひとつとっても、特別感を感じてもらえるようにルール化して共有しています。
期待感を高める一貫性のある体験づくり
メニューの素材として採用した白木、革、ジーンズ生地。それぞれの素材が映し出す雰囲気は、その時間帯の料理とサービスの質と響き合います。お客様が触れる最初の接点だからこそ、そこで感じる期待感を、その後の料理と接客でしっかりと体現していく。
この一貫性が、お店の印象を強く残すことにつながっているのです。実際、お客様からは『メニューブックを手に取った時から、特別な時間が始まる感じがする』『スタッフの方の対応も含めて、細部まで行き届いている』といった声をいただいています。
特に40代女性のお客様は、こういった細やかな演出や心配りの意図を敏感に感じ取ってくださいます。その期待に応えることで、単なる食事の場所ではなく、『特別な体験ができる場所』として認識していただけるようになりました。
それでは、今回のお話を実践していただくために、具体的なアクションプランをご提案させていただきます。期待を超える飲食店づくりは、計画的な取り組みから始まります。一つひとつのステップを確実に実行していくことで、理想のお客様に選ばれるお店へと変化していくでしょう。
ファーストステップ
(明日から始められること)
理想のお客様像の具体化
- 年齢、性別だけでなく、生活スタイルを具体的に書き出す
- どんな価値観を持っているか明確にする
- どんな時に外食を楽しみたいと思うか調査する
- いくらくらいなら心地よく支払えるか検討する
接客の基本見直し
- 現在使っている接客用語をすべてリストアップする
- お客様の入店から退店までの流れを図式化する
- スタッフ全員の接客の統一性をチェックする
セカンドステップ
(1週間以内にできること)
お客様との接点の総点検
- メニューブックの状態や素材をチェックする
- テーブルセッティングの細部を見直す
- 店内装飾の印象を客観的に確認する
- BGMや照明の雰囲気を時間帯別に検討する
スタッフとの価値観共有
- なぜその接客が必要なのか理由を説明する
- お客様にどんな体験を提供したいのか共有する
- チームとしての明確な目標を設定する
サードステップ
(1ヶ月以内に取り組むこと)
体系的な仕組みづくり
- 独自のハウスルールを文書化する
- お客様の声を継続的に収集するシステムを構築する
- 集めた声をもとにメニューや接客を改善する仕組みを作る
最終確認と定着化
- すべての取り組みに「意図」があるか確認する
- 小さな変化の効果を測定する方法を決める
- 理想のお客様からの反応を記録するシステムを整える
最も大切なことは、すべての取り組みに「なぜそうするのか」という明確な意図を持つことです。最初は小さな変化から始めてください。理想のお客様に喜んでいただける店舗づくりは、こういった細部への配慮の積み重ねから始まります。
まとめ:理想のお客様を描き、期待を超える飲食店づくり
ここまで理想のお客様を見つけ、期待を超える接客を実現する方法についてお伝えしてきました。最後に要点を5つにまとめました。
- 理想のお客様像は年齢や性別だけでなく、生活スタイルや価値観まで具体的に描くことで、一貫性のある価値提供が可能になる。
- メニューブックの素材選びなど、細部へのこだわりが特別な顧客体験を生み出し、特に40代女性客はこうした心配りに敏感に反応する。
- 「ハウスルール」のような独自の接遇基準を設け、背景にある考え方まで理解することで、形式的でない心のこもったサービスが実現できる。
- 一人一人のお客様に合わせた自然な挨拶や品格ある接遇用語を採用することで、お客様は「特別な体験ができる場所」として認識するようになる。
- 理想の飲食店づくりは、お客様像の具体化、接客の見直し、接点の総点検、価値観の共有といった小さな変化の積み重ねから始まる。